2025年9月5日、日本ロボット学会学術講演会にて、当社代表の戸出が「現場から見たドローン安全管理 ― 技術と制度の隙間を埋めるには」というテーマで発表を行いました。ここでは、その内容をかみ砕いてご紹介します。
技術や制度だけでは守れない「現場の隙間」
ドローンの社会実装が進むにつれ、法制度や技術は年々整備されています。
しかし、実際に事故やトラブルが起きる現場では、制度や技術だけではカバーしきれない隙間が存在します。
代表的な課題は次の3つです。
- 責任の集中
不具合が起きると最終責任は操縦者に集約され、組織的なリスク管理が機能しにくい。 - 属人性と経験頼み
ベテランの勘や暗黙知がルール化し、再現性がなく新人教育も難しい。 - チェックリストの形骸化
「紙を埋めること」が目的化し、本来の点検やリスク感知が弱まる。
これらは、制度やマニュアルを整備するだけでは解決できません。
解決の鍵は「ノンテクニカルスキル」
当社が注目したのは、ノンテクニカルスキル(NTS)です。
これは操縦技量ではなく、チームとしての判断力・コミュニケーション・初動対応力など、人と組織の総合力を高める取り組みです。
当社では以下の4つを体系化し、現場に導入してきました。
- チーム・ビルディング:役割理解と協力意識を醸成
- CRM(基礎/実践):伝達ミスや思い込みを防ぎ、声をかけ合う文化を育成
- 応急手当:墜落や切創、熱中症といった現場特有リスクに備え、迷わず動ける初動力を養成
- SMS:航空分野で確立された安全マネジメントを現場で回せる仕組みに落とし込み
導入後には、コミュニケーションの活発化やヒューマンエラーの減少、初動対応力の向上といった成果が見られました。
「できているつもり」を打ち破るD-LOSA
もう一つの取り組みが、当社独自のD-LOSA(Drone Line Operations Safety Audit)です。
これは、現場の行動や判断を第三者視点で観察・可視化し、形式的な運用や思い込みを防ぐ仕組みです。
JISなどの規格が「文書による信頼」を担保するなら、D-LOSAは「現場の鏡」として機能します。現時点では内部監査のみですが、導入により現場のメンバー自身が改善点を発見し、自発的に提案する文化が芽生えています。
今後の展望
今回の発表を通じて改めて感じたのは、安全は誰か一人が守るものではなく、全員で守るものだということです。
そして、一度仕組みを導入して終わりではなく、現場で回し続けることで初めて文化として根付くということです。
ドローン産業界の信頼を高めるには、技術や制度の整備だけでなく、こうした現場主導の安全文化が不可欠です。
当社は今後も、ノンテクニカルスキルやD-LOSAを通じて、ドローン産業界全体の安全文化向上に積極的に取り組んでまいります。
日本ロボット学会という学術の場で、現場からの知見を共有できたことは大変貴重な経験でした。提出した論文や、今回の基調講演が、現場で安全を考える方々の一助となれば幸いです。
なお、本日は登壇時にプレゼン資料が表示されない不具合が発生してしまいました。ご迷惑をおかけいたしましたこと、深くお詫び申し上げます。投影予定でした資料はこちらに保存してあります。

戸出 智祐(株式会社ダイヤサービス 代表/“ドローン安全ヘンタイ”)
ドローン運航安全の分野で10年以上の経験を持つ、安全管理・教育の専門家。全国の自治体や企業など10社以上に対して、航空業界レベルの安全運航体制づくりや研修、コンサルティングを行ってきました。
操縦技量だけでなく、チームや組織の“ノンテクニカルスキル”を重視し、現場で本当に役立つ安全文化を普及することに情熱を注いでいます。自ら現場で危険な経験をしたことが原点で、「誰もが安心して働ける現場」を本気で目指して活動中。
千葉市花見川区を拠点に、現場目線でリアルな課題解決にこだわり続けています。無類の車好き。ブログでは、同じ現場型の読者の方と想いを共有できればと考えています。