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御嶽山ドローン墜落インシデントから考える

9月8日、王滝村が公表した御嶽山での物資輸送実証実験中のドローン墜落について、原因が明らかになりました。報告によれば、バッテリーから機体へ電源供給するケーブル被覆が飛行中の振動でカーボン板と擦れて破れ、制御系基盤とショートして全モーターが停止したことが直接的な原因とされています。

幸いにも人的・物的被害はありませんでしたが、今回の事例は私たちにとって多くの示唆を与えてくれます。

技術的要因だけではない

私の考えとしては、複合的な要因が重なったインシデントだと思います。

  • カーボン板にエッジ処理がなされていなかった可能性
  • ケーブル被覆に対するスパイラルチューブなどの保護が不足していた可能性
  • 運航前点検やバッテリー交換時の点検が十分でなかった可能性
  • 点検項目に当該部位が含まれていなかった可能性

加えて、記事によれば2回目のフライトで事象が出ていることから、最初からケーブル被覆が一部剥離していた可能性も考えられます。つまり「偶発的な故障」ではなく、「最初から潜んでいたリスクが顕在化した」ケースとも解釈できます。

プロセス・文化面の課題

このような事象は、単なるハードの問題にとどまりません。
むしろ重要なのは、運航プロセスやヒューマンファクターに起因するリスクです。

  • 点検手順の網羅性
  • 点検を確実に行わせる組織文化
  • 「想定外」を減らすリスクマネジメントの姿勢

DJIのように完成度の高い量産機のみを扱っていると見落としがちな「自作機・改造機特有のリスク」が浮き彫りになったとも言えるでしょう。

追加で考えられる要因

今回の情報から推測すると、以下の視点も検討に値します。

  • 設計段階でのリスク評価不足
    ケーブルとカーボン板が接触する構造そのものが設計上のリスクを孕んでいた可能性。
  • 環境条件の影響
    高地(標高2,200〜2,900m)での飛行は気温変化や振動特性に影響を与えやすい。これがケーブル摩耗を早めた可能性。
  • 整備記録や追跡の不十分さ
    同型機で同様の事象が「過去になかった」とのことですが、もし軽微な擦れや兆候が過去にあったなら、記録・報告の仕組みが機能していなかった可能性もある。

「自分たちの運航」にどう活かすか

こうしたインシデントは、決して他人事ではありません。
規模や機種を問わず、私たちの運航現場でも起こり得る話です。

大切なのは「失敗を見て終わり」にしないこと。
「自分たちならどう防げるか?」を問い、運航に反映させることこそ最大の学びだと思います。

  • 点検項目の見直し
  • ケーブルや構造物の保護処理の標準化
  • 異常兆候の記録と共有文化の徹底

今回のインシデントを、ドローン産業界全体で安全性を高めるきっかけにできればと思います。

<strong>戸出 智祐(株式会社ダイヤサービス 代表/“ドローン安全ヘンタイ”)</strong> ドローン運航安全の分野で10年以上の経験を持つ、安全管理・教育の専門家。全国の自治体や企業など10社以上に対して、航空業界レベルの安全運航体制づくりや研修、コンサルティングを行ってきました。 操縦技量だけでなく、チームや組織の“ノンテクニカルスキル”を重視し、現場で本当に役立つ安全文化を普及することに情熱を注いでいます。自ら現場で危険な経験をしたことが原点で、「誰もが安心して働ける現場」を本気で目指して活動中。 千葉市花見川区を拠点に、現場目線でリアルな課題解決にこだわり続けています。無類の車好き。ブログでは、同じ現場型の読者の方と想いを共有できればと考えています。

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