エアマンシップの徹底と安全の追求で、空の可能性を誰もが安心して享受できる世界を。

「事故ゼロ」を、願いではなく、戦略に。

なぜ、今この記事を書くのか

私たちは、ドローンを飛ばしている会社です。でも、ただ飛ばしているのではありません。

お客様の大切な案件を任されている。
チームメンバーの安全を預かっている。
そして、ドローン産業界全体の信頼を、背負っている。

私たちが策定した「安全憲章」と「安全行動指針」。それは、単なる社内ルールではありません。お客様への約束であり、チームへの誓いであり、そして、この業界で働くすべての人たちへのメッセージです。

この記事を通じて、私たちがなぜ、どのようにして「事故ゼロの運航文化」を育てようとしているのか。その想いを、お伝えしたいと思います。

すべての始まりは、一つの「ヒヤリ」から

数年前、私たちの現場で、ある出来事がありました。

ベテランパイロットが操縦するドローンが、運航中に予期しない動きを見せた。積載重量オーバーが原因でした。幸い、パイロットの冷静な判断で無事に着陸できましたが、あと数秒遅れていたら、機体は墜落していたかもしれません。その日、チーム全員で振り返りをしました。

「なぜ、このヒヤリが起きたのか。」
「誰かのミスだったのか。」
「次はどうすれば防げるのか。」

話し合いの中で、ある若手スタッフがこう言いました。

「実は、運航前の重量測定を行っていたとき、荷物そのものだけで、ケースやデータロガー装置なんかは一緒にしていなかったんです。でも、ベテランの〇〇さんが『大丈夫』と言ったので、何も言えませんでした。」

その言葉に、私はハッとさせられました。「違和感があったのに、声に出せなかった。」

それは、彼の問題ではありません。「小さな違和感を言い出しにくい空気」を作ってしまっていた、私たち組織の問題なのです。

このときから私は、考えを改めることにしました。「誰か一人のせいにしない。そして、誰もが安心して声を上げられる組織を作る。」それが、今の「安全憲章」と「安全行動指針」を策定する、最初の一歩でした。

「責任を一人にしない」という決意

安全行動指針の1番目に、私たちはこう掲げました。

「責任を一人にしない文化を守る」

なぜ、これを最初に持ってきたのか。それは、この一文が、私たちの組織文化の根幹だからです。トラブルが起きたとき、「誰が悪かったのか」を追及する組織と、「どうすれば次は防げるか」を考える組織。どちらが安全だと思いますか?

答えは明白です。トラブルを「誰かのせい」にした瞬間、情報共有は止まります。みんな「自分が責められないように」隠すようになる。それが一番危険なんです。

だから私たちは「誰が悪いか」ではなく「どうすれば乗り越えられるか」を第一に考えるようにしました。運航管理も、整備担当も、パイロットも、みんなで状況を共有し、役割を分担し、互いに支え合いながら行動する。

これは、きれいごとではありません。

実際に、ヒヤリハットの報告を推奨し、月次の安全推進会議では「誰が」ではなく「何が起きたか」を中心に議論しています。「小さな違和感を、安心して言い出せる組織」それが、私たちの目指す姿です。

6つの指針に込めた、現場への敬意

安全行動指針は、全部で6つあります。

  1. 責任を一人にしない文化を守る
  2. 情報を正確・迅速に共有し、支え合いながら安全を築く
  3. 常に学び、技術と判断力を磨き続ける
  4. プロとしての自覚を持ち、資機材の点検を徹底する
  5. 緻密な運航計画を立て、安全を設計する
  6. KY(危険予知)を習慣化し、リスクに先回りする

この6つの順序にも、意味があります。

まず、組織文化とチームの連携(指針1・2)。
次に、個人の能力とプロ意識(指針3・4)。
そして、日々の運航プロセス(指針5・6)。

文化が土台にあり、その上に個人の能力が乗り、それを日々の業務で実践する。この構造は、私たちが現場で何度も議論を重ねて、たどり着いた形です。

特に、指針5番目の「緻密な運航計画を立て、安全を設計する」という言葉には、強い想いがあります。「準備を『作業』にせず、事故を防ぐ『設計』にレベルアップさせる。」運航計画は、単にルートを引いて、チェックリストを埋めるだけの「作業」ではありません。

「もしここで風が急変したらどうするか」
「もし機体に異常が出たら、どこに緊急着陸するか」

こうした「What if?」を考え抜くことが、「安全を設計する」ということです。

そして、最後の指針6番目、「KY(危険予知)を習慣化し、リスクに先回りする」。「事故は偶然ではなく、無関心と黙認の積み重ねから生まれる。」この言葉を、私たちは身を以て体験しています。「気づいた人が止める」「違和感を声に出す」を、チームの常識にする。それが、私たちの6つ目の指針です。

お客様への約束、チームへの信頼

お客様は、私たちに何を期待しているのでしょうか。

高性能なドローン?
美しい映像?
迅速な納品?

もちろん、それらも大切です。でも、一番大切なのは「安全」なはずです。どれだけ美しい映像が撮れても、事故を起こしてしまったら、すべてが台無しになります。お客様の信頼を損なうような安易な事故を、決して起こさない。それが、私たちの最大の使命であり、安全憲章に込めた約束です。

そして、チームメンバーへ。
私は、皆さんを信頼しています。一人ひとりが、高い技術と判断力を持ち、プロとしての自覚を持って現場に立っている。私はそのことを知っています。だからこそ、お願いがあります。

「一人で抱え込まないでください。」

困ったとき、迷ったとき、違和感を感じたとき。どうか、声を上げてください。それは弱さではなく、むしろ強さです。安全を守るための、最も勇気ある行動です。

そして、誰かが声を上げたとき、私に限らず、私たち全員が必ず耳を傾けるようにします。

「責任を一人にしない」

それが、私たちの組織の文化だからです。

結び:事故ゼロの運航文化を、業界全体へ

私たちがSMSや安全憲章を策定した理由は、ただ一つ。

お客様の信頼を損なうような安易な事故を、決して起こさないため。

でも、それだけではありません。どれだけ社内で安全体制を構築しても、事故が起きれば、業界全体が「ドローンは危ない」という印象で見られてしまいます。だから私たちは、この安全憲章・行動指針を、社外にも公開しています。私たちの取り組みが、ドローン産業界全体の安全文化向上に、少しでも貢献できれば。そう願っています。

「事故ゼロ」は、願いではありません。戦略です。そして、その戦略を実行するのは、現場で働く一人ひとりのスタッフです。私たちの「事故ゼロの運航文化」は、まだ始まったばかりです。

でも、確実に、一歩ずつ、前に進んでいます。安全こそが、運航の土台である。その信念を胸に、私たちはこれからも、運航業務を継続していきます。

そしていつかどこかのタイミングで、既存の事業者様にしっかりと運航業務をバトンパスしていきたいと思います。

<strong>戸出 智祐(代表取締役 / ドローン安全管理コンサルタント)</strong> ノンテクニカルスキル講習(CRM、チームビルディング、 日本初のドローン応急手当講習)を提供。米国FAAのSMS義務化に先行したノウハウで、 1,000時間超の運航経験(失敗含む)からSMSを構築。 2023年より3年連続で安全報告書を自主公開している、日本唯一の現場安全管理・リスクマネジメント実践者です。 このブログでは、教科書に載っていない 現場の実践知と失敗から学んだ教訓を共有します。 ▶ 講習・コンサルのお問い合わせ <a href="https://daiyaservice.com/contact">https://daiyaservice.com/contact</a>

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