第1回では、私たちが機材調達と目先の売上に向き合った前半5年を経て、現場で積み上がった違和感から安全マネジメントへ投資の軸を移していった背景をお話ししました。
第2回では、その違和感が「操縦者責任で終わってしまう構造」や「人と仕組みの境界」にあること、そして現場の必然として「応急手当 → CRM → チームビルディング → SMS」の順で講習体系を整えてきた理由を整理しました。
最終回となる第3回は、その続きです。私たちがずっと持ち続けている基本スタンス、「最終的にドローンのフライトは既存事業者(=各社の中の人)が担うべき」という考え方について、誤解なく、現場目線で書いてみたいと思います。
外注は悪ではない。でも常態化は組織の力を細らせる
まず前提として、外注を否定したいわけではありません。立ち上げ期、繁忙期、特殊な案件、高度な要求がある現場。そうした場面で外部の力を借りることは、現実的で、合理的で、むしろ必要です。
ただ、私たちが違和感を持っているのは、「外注が便利だから」という理由だけで運航が常態化してしまう状態です。この状態が続くと、組織の中に
- 判断の基準
- リスクの見える化
- ブリーフィングの質
- 異常の兆しの拾い方
- 改善の回し方
といった運航のノウハウが蓄積されにくくなります。
飛行は成立しているのに、運航がスッキリしない。何かあれば操縦者の責任に集まって終わってしまう。こうした問題は、結局のところ「運航がチームの仕事として設計されていない」ことから起きやすい。私たちは現場でそれを何度も見てきました。
私たちの結論:運航は社内の資産にしたほうが強い
運航を内製する最大の価値は、操縦者を増やすことだけではありません。本質は、運航の知恵と判断の型が、組織に蓄積されることです。
人が変わっても、現場が変わっても、条件が変わっても、回し続けられる運航が維持できる。この再現性は、操縦技量の高さだけでは作れません。
だからこそ、最終的に各社の中で運航を回せる状態を作ったほうが強いというのが私たちの考えです。
「人が入れ替わる問題」は、仕組みで解ける
内製化の話をすると、必ず出てくる現実があります。「数年で人が入れ替わってしまう」という課題です。でもこれは、内製化が不可能という意味ではなく、教育・トレーニングの仕組みが必要だというサインだと思っています。
社内に教育・トレーニング部門を作る。もしくは小さくても、育成の役割を正式に持つ人と時間を確保する。そこに、私たちは外部パートナーとして伴走できます。
当社自身も「モルモット」として運航を続けている
ここで、私たち自身の立ち位置についても触れておきたいと思います。
私たちが今も自社で運航業務を行っているのは、単に売上のためでも、運航を外に出さないためでもありません。自分たちの運航を、トライアンドエラーの「実験場(モルモット)」として位置づけているからです。
新しい運航プロセスやチェックリスト、SORA2.5 の評価やOSOの運用、ブリーフィングや振り返りのやり方、疲労管理や情報共有の仕組み・・・。
これらをいきなりお客様に「こうすべきです」と持ち込むのではなく、まずは自社の運航で試し、うまくいったこと・うまくいかなかったことを含めて、自分たちのリスクで検証する場所として運航を続けています。
ときには失敗もしますし、現場で「これはダメだ」「このやり方は続かない」と痛感することもあります。その経験ごとセットで、講習やコンサルティングに反映していく。
言い換えれば、私たち自身がモルモットになることで、“机上の理論だけではない運航ノウハウ”を貯めている感覚です。
過渡期だからこそ、当社も運航業務を行っていますが、それは「運航案件を取り続けたいから」ではなく、「より良い運航の形を、自分たちの現場で先に試すため」でもあります。
当社が担える伴走の範囲
私たちの立ち位置はシンプルです。
- 基礎の運航体制をゼロベースから整えたい
→ 現場コンサルとして、各社に最適な運航プロセスの構築をお手伝いできます。 - 操縦技量だけでは現場が安定しない
→ 応急手当、CRM、チームビルディング、SMSを、現場で機能する形に落とし込む支援ができます。 - 特殊・高度な案件だけは外部の経験も活用したい
→ 移行期の運航支援や、難易度の高い現場での協働も可能です。
つまり私たちは、運航の外注先として固定化されることを目指しているのではなく、各社が自走できる状態に近づくための伴走者でありたいと考えています。
内製化とは、「いきなり全部を自力でやる」ことではなく、育つ構造を社内に持つことです。
外注費の話は、結局、人への投資の話
少し率直に書くと、必要以上に外注費を使ってほしくない、という気持ちもあります。そのお金は、ぜひ御社の従業員に還元してほしい。教育やトレーニング、現場での振り返りに使ってほしい。チームとしての判断の質を上げるために使ってほしい。
運航が社内の誇りと資産になった組織は、現場の空気が変わります。そして、その変化は必ず安全と品質に返ってきます。
まとめ
第1回で書いたように、私たちは機体ではなく安全マネジメントへ投資するフェーズに入りました。
第2回で書いたように、その中心には「操縦者責任で終わる構造を変えたい」という強い違和感があり、現場の必然順として応急手当 → CRM → チームビルディング → SMSを整えてきました。
そして最終回の結論はここです。回し続けられる運航を作るなら、最終的に運航は内製へ。
過渡期だからこそ、外部の力が必要な場面はあります。ただ、特殊な案件・高度な案件以外は、各社の中で回せる体制を作ったほうが、長い目で見て強い。
私たちはそのために、運航の仕組み、教育、そしてノンテクニカルスキルを中心に、現場に根づく形で伴走していきます。

戸出 智祐(代表取締役 / ドローン安全管理コンサルタント)
ノンテクニカルスキル講習(CRM、チームビルディング、 日本初のドローン応急手当講習)を提供。米国FAAのSMS義務化に先行したノウハウで、 1,000時間超の運航経験(失敗含む)からSMSを構築。 2023年より3年連続で安全報告書を自主公開している、日本唯一の現場安全管理・リスクマネジメント実践者です。 このブログでは、教科書に載っていない 現場の実践知と失敗から学んだ教訓を共有します。
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