ドローン事業者選定チェックリスト
〜真の安全管理能力を見抜くための発注者向けガイド〜
作成の背景: 大手企業・実績件数・メディア露出だけでは、本当の安全管理能力は判断できません。このチェックリストは、現場の実態を見抜くために作成されました。
【使い方】
各項目を事業者に質問・確認し、以下の基準で評価してください:
評価基準:
90点以上:真に安全管理が優れている(推奨)
60-89点:一定水準あり(要注意点の確認)
60点未満:安全管理に重大な懸念あり(避けるべき)
第1部:SMS(安全管理システム)の実装状況【30点満点】
1-1. 安全管理規程の有無(3点)
質問: 「貴社の安全管理規程(Safety Management Manual)を見せていただけますか?」
評価ポイント:
- ✅ 文書化された規程がすぐに提示できる
- ✅ 安全方針、責任体制、リスク管理プロセスが明記されている
- △ 「社内にあります」と言うが提示できない
- ❌ 「特に作っていない」「口頭で伝えている」
1-2. 安全統括責任者の明確化(3点)
質問: 「安全統括責任者は誰ですか?その方の権限と責任範囲を説明してください」
評価ポイント:
- ✅ 経営層(代表取締役・役員レベル)が就任
- ✅ 安全に関する最終意思決定権を持つ
- △ 現場責任者レベル(部長・課長)が兼務
- ❌ 「特に決めていない」「現場判断」
1-3. リスクアセスメントの実施(3点)
質問: 「毎回のフライト前に、どのようなリスク評価を行っていますか?評価シートを見せてください」
評価ポイント:
- ✅ 標準化されたリスク評価シート(脅威・リスク・対策が明記)
- ✅ 天候、地形、電波環境、第三者、機体状態などを網羅
- △ チェックリストはあるが、リスク評価の記録は残していない
- ❌ 「パイロットの経験に任せている」
1-4. ヒヤリハット報告制度(3点)
質問: 「ヒヤリハット(インシデント)の報告制度はありますか?過去1年間の報告件数と改善事例を教えてください」
評価ポイント:
- ✅ 匿名報告可能な仕組みがあり、実際に報告されている
- ✅ 報告に基づく改善事例を複数提示できる
- △ 制度はあるが、報告件数が極端に少ない
- ❌ 「重大事故以外は報告していない」
⚠️ 重要:報告件数が「ゼロ」は危険信号 → 報告文化がない = 問題が隠蔽されている可能性
1-5. 事故・インシデントの記録と分析(3点)
質問: 「過去3年間の事故・インシデント履歴を開示してください。原因分析と再発防止策も併せて」
評価ポイント:
- ✅ 全ての事故・インシデントを記録し、原因分析を文書化
- ✅ 再発防止策を具体的に説明できる
- △ 「大きな事故はない」と言うが記録がない
- ❌ 「情報開示できない」「問題ない」と回答を避ける
⚠️ 重要:「事故ゼロ」を誇る企業は要注意 → 本当にゼロか、報告していないだけか見極めが必要
1-6. 安全教育・訓練の実施(3点)
質問: 「パイロットや運航管理者に対して、どのような安全教育を定期的に実施していますか?」
評価ポイント:
- ✅ 年間教育計画があり、CRM・TEM・緊急時対応訓練を実施
- ✅ 訓練記録を管理し、定期的に評価している
- △ 「国家資格取得時の教育のみ」
- ❌ 「現場OJTのみ」
1-7. 安全監査の実施(3点)
質問: 「内部監査または第三者による安全監査を受けていますか?直近の監査報告書を見せてください」
評価ポイント:
- ✅ 年1回以上の監査を実施
- ✅ 指摘事項と改善状況を説明できる
- △ 自己点検のみ(第三者監査なし)
- ❌ 監査を実施していない
1-8. 安全文化の醸成(3点)
質問: 「安全最優先の文化をどのように組織に浸透させていますか?具体的な取り組みを教えてください」
評価ポイント:
- ✅ トップメッセージ・安全ミーティング・表彰制度などがある
- ✅ 「納期より安全」を実践した事例がある
- △ 特別な施策はない
- ❌ 「みんなプロだから大丈夫」
1-9. 疲労管理・労働時間管理(3点)
質問: 「パイロットの連続勤務時間・休憩時間・月間飛行時間の制限はありますか?」
評価ポイント:
- ✅ 明文化された勤務時間規程があり、順守されている
- ✅ 疲労度チェック(自己申告制度)がある
- △ 「労働基準法は守っている」(ドローン特有の基準なし)
- ❌ 「特に決めていない」「案件次第」
1-10. PDCAサイクルの運用(3点)
質問: 「安全管理のPDCAサイクルをどのように回していますか?直近の改善事例を教えてください」
評価ポイント:
- ✅ 年間安全目標→実施→評価→改善のサイクルが回っている
- ✅ データに基づく改善事例を複数提示できる
- △ 「問題が起きたら対応している」(事後対応のみ)
- ❌ 「特に仕組みはない」
第2部:CRM(Crew Resource Management)とTEM【30点満点】
2-1. CRM教育の実施(3点)
質問: 「CRM(Crew Resource Management)教育を実施していますか?内容を説明してください」
評価ポイント:
- ✅ CRM講習を定期的に実施(社内または外部研修)
- ✅ コミュニケーション、状況認識、意思決定、チームワークを訓練
- △ 曖昧な回答・「検討中」「今後導入予定」
- ❌ 「CRMって何ですか?」
⚠️ 重要:CRMを知らない事業者は論外
2-2. TEM(脅威とエラーの管理)の理解(3点)
質問: 「TEM(Threat and Error Management)の概念を運航に取り入れていますか?」
評価ポイント:
- ✅ TEMの概念を説明でき、実際の運航プロセスに組み込んでいる
- ✅ 脅威→エラー→望ましくない状態の連鎖を防ぐ仕組みがある
- △ 概念は知っているが実践していない
- ❌ 「知らない」
2-3. 運航チーム体制(3点)
質問: 「1回のフライトに何名で臨みますか?役割分担を説明してください」
評価ポイント:
- ✅ 最低2名体制(PIC・監視者)
- ✅ 役割分担が明確(PIC・監視者・記録者など)
- △ 基本2名だが、1名の場合もある
- ❌ パイロット1名で対応
⚠️ 重要:1名運航は高リスク
2-4. ブリーフィング・デブリーフィング(3点)
質問: 「フライト前後のブリーフィング(事前打ち合わせ)とデブリーフィング(振り返り)を実施していますか?」
評価ポイント:
- ✅ 毎回必ず実施し、議事録を残している
- ✅ ブリーフィングで役割・リスク・緊急時対応を確認
- △ 「簡単に確認している」(記録なし)
- ❌ 「特にやっていない」
2-5. コミュニケーションプロトコル(3点)
質問: 「飛行中のチーム内コミュニケーションについて、標準化されたプロトコルはありますか?」
評価ポイント:
- ✅ コールサイン・用語・確認手順が標準化されている
- ✅ 復唱確認(リードバック)を実施
- △ 標準化されていないが、ある程度統一されている
- ❌ 「特に決めていない」
2-6. アサーティブネス(発言しやすい文化)(3点)
質問: 「若手や経験の浅いメンバーでも、安全上の懸念を自由に発言できる文化がありますか?」
評価ポイント:
- ✅ 発言を推奨する文化がある
- ✅ 若手の発言でフライトを中止した事例がある
- △ 建前上は「発言してよい」(実例なし)
- ❌ 「パイロットの判断が最優先」
2-7. 状況認識(Situational Awareness)の維持(3点)
質問: 「チーム全員が状況認識を保つために、どのような工夫をしていますか?」
評価ポイント:
- ✅ 定期的な情報共有の手順がある
- ✅ 異常時の気づきを促す仕組みがある
- △ 「気をつけるように注意喚起している」
- ❌ 「特に意識していない」
2-8. 意思決定プロセス(3点)
質問: 「Go/No-Go判断(飛ぶか飛ばないか)は誰がどのように行いますか?」
評価ポイント:
- ✅ 明確な判断基準がある
- ✅ チーム全員の合意を得て判断
- △ パイロットの判断に任せている
- ❌ 「顧客の意向で決める」
2-9. ストレス・プレッシャー管理(3点)
質問: 「納期や顧客の期待などのプレッシャー下でも、安全を優先できる仕組みはありますか?」
評価ポイント:
- ✅ 安全理由でフライトを中止してもペナルティがない
- ✅ 実際に中止した事例を説明できる
- △ 「安全優先」と言うが曖昧
- ❌ 「納期優先」
⚠️ 重要:顧客の圧力で飛ばす企業は危険
2-10. 緊急時対応訓練(3点)
質問: 「機体トラブルや緊急事態に備えた訓練を実施していますか?」
評価ポイント:
- ✅ 定期的にシミュレーション訓練を実施
- ✅ 緊急時の役割分担・連絡体制が明確
- △ マニュアルはあるが訓練なし
- ❌ 訓練を実施していない
第3部:運航管理体制【20点満点】
3-1. 標準運航手順書(SOP)の整備(3点)
質問: 「標準運航手順書(SOP)はありますか?機体ごと、業務ごとに標準化されていますか?」
評価ポイント:
- ✅ 詳細なSOPが整備され、定期的に更新されている
- ✅ SOPとチェックリストが連動している
- △ 簡易的なマニュアルのみ
- ❌ パイロット任せ
3-2. フライトログの管理(3点)
質問: 「全てのフライトのログ(記録)を保管していますか?何年分保管していますか?」
評価ポイント:
- ✅ 全てのフライトログをデジタル・紙で保管(最低3年)
- △ 重要な案件のみ保管
- ❌ 保管していない
3-3. 機体整備記録の管理(3点)
質問: 「機体の整備記録はどのように管理していますか?」
評価ポイント:
- ✅ 機体ごとに整備履歴・点検記録を保管
- △ 異常があった時のみ記録
- ❌ 記録していない
3-4. 気象情報の活用(3点)
質問: 「飛行前の気象判断はどのように行っていますか?使用している気象情報サービスは?」
評価ポイント:
- ✅ 複数の情報源(気象庁・民間サービス・現地観測)を活用
- ✅ 具体的な中止基準(風速・視程・降水量)がある
- △ 天気予報を閲覧する程度
- ❌ 現場判断のみ
3-5. 飛行計画と承認プロセス(3点)
質問: 「飛行計画は誰が作成し、誰が承認しますか?」
評価ポイント:
- ✅ パイロット以外の者(運航管理者・安全管理者)が承認
- ✅ 承認基準が明確
- △ パイロットが計画・実行
- ❌ 承認プロセスがない
3-6. 保険加入状況(2点)
質問: 「どのような保険に加入していますか?補償額は?」
評価ポイント:
- ✅ 賠償責任保険・機体保険に加入(十分な補償額)
- △ 最低限の保険のみ
- ❌ 未加入
3-7. サブコントラクター(外部協力者)管理(3点)
質問: 「外部のパイロットや協力会社に依頼する場合、どのような基準で選定しますか?」
評価ポイント:
- ✅ 自社と同等の安全基準を要求
- ✅ 定期的に評価・監査を実施
- △ 資格保有者であれば依頼
- ❌ 特に基準なし
第4部:透明性と企業姿勢【20点満点】
4-1. 安全情報の開示姿勢(3点)
質問: 「過去の事故・トラブルについて情報開示はできますか?」
評価ポイント:
- ✅ 過去の事例と対策を積極的に公開
- ✅ 誠実に回答する姿勢
- △ 「守秘義務があり開示できない」
- ❌ 「情報は出せない」
⚠️ 重要:情報開示を拒む企業は要注意
4-2. 顧客の無理な要求への対応(3点)
質問: 「天候が悪化した場合や安全上問題がある場合、どのように対応しますか?」
評価ポイント:
- ✅ 安全上不可能な場合はきっぱりと断る
- ✅ 代替案を提案できる
- △ 「可能な範囲で対応します」
- ❌ 「頑張ります」
⚠️ 重要:顧客の無理な要求に応じる企業は危険
4-3. 安全コストへの理解(3点)
質問: 「安全管理にどの程度のコストをかけていますか?」
評価ポイント:
- ✅ 教育・訓練・監査に十分な予算を確保
- ✅ 「安全は投資」という認識
- △ 最低限のコストのみ
- ❌ コスト優先
4-4. 業界団体・認証への参加(3点)
質問: 「JUIDA、DRONES SAFETY PILOTS ASSOCIATION(DSPA)などの業界団体への参加、JIS認証などを取得していますか?」
評価ポイント:
- ✅ 複数の団体に参加し、積極的に活動
- ✅ 品質認証を取得済み、または取得予定
- △ 会員になっているだけ
- ❌ 不参加
4-5. 継続的改善の姿勢(3点)
質問: 「今後、安全管理をどのように向上させる計画ですか?」
評価ポイント:
- ✅ 具体的な改善計画(SMS導入、CRM強化など)がある
- ✅ 海外事例や最新技術を研究している
- △ 「現状維持」
- ❌ 「特に検討していない」
4-6. 経営層の安全への関与(2点)
質問: 「経営トップは安全管理にどの程度関与していますか?」
評価ポイント:
- ✅ 定期的に安全会議に参加し、安全方針を自ら語る
- △ 「現場に任せている」
- ❌ 経営者は詳細を知らない
4-7. 実際の現場見学の許可(3点)
質問: 「契約前に、実際のフライト現場を見学させていただけますか?」
評価ポイント:
- ✅ 「ぜひ見てください」と積極的
- △ 「日程調整が必要」と消極的
- ❌ 「見学はお断りしている」
⚠️ 重要:現場を見せない企業は要注意
第5部:実績と経験【ボーナス10点】
これらは「あれば加点」ですが、なくても減点はしません。
5-1. SMS講習の提供実績(2点)
自社でSMS/CRM講習を外部提供している
5-2. 航空業界出身者の在籍(2点)
元航空会社パイロット・整備士・管制官が在籍
5-3. 国家プロジェクトへの参画(2点)
NEDO、国土交通省、経済産業省の実証事業に参加
5-4. 学術論文・書籍の執筆(2点)
ドローン安全管理に関する論文発表・書籍執筆の実績
5-5. 無事故運航年数(2点)
5年以上の無事故運航実績(第三者被害・重大機体損傷なし)
📊 スコアサマリー
第1部:SMS0 / 30点
第2部:CRM0 / 30点
第3部:運航管理0 / 20点
第4部:透明性0 / 20点
基本合計0 / 100点
第5部:ボーナス0 / 10点
総合計0 / 110点
📋 評価テーブル
| カテゴリ | 満点 | 獲得点 |
|---|---|---|
| 第1部:SMS(安全管理システム) | 30点 | 0点 |
| 第2部:CRM・TEM | 30点 | 0点 |
| 第3部:運航管理体制 | 20点 | 0点 |
| 第4部:透明性・企業姿勢 | 20点 | 0点 |
| 基本合計 | 100点 | 0点 |
| 第5部:ボーナス(実績・経験) | 10点 | 0点 |
| 総合計 | 110点 | 0点 |
🎯 最終判定
⭐ 判定基準
| 点数 | 判定 | 説明 |
|---|---|---|
| 90点以上 | 優秀 | 真の安全管理体制が構築されている(推奨) |
| 70-89点 | 良好 | 基本的な安全管理はできている(条件付き推奨) |
| 50-69点 | 要注意 | 安全管理に課題あり(慎重に判断) |
| 50点未満 | 不合格 | 安全管理が不十分(発注不可) |
🚨 レッドフラグ(即座に失格とすべき項目)
- ❌ 「CRMって何ですか?」 → 安全管理の基本知識がない
- ❌ 「ヒヤリハットは報告していない」 → 安全文化の欠如
- ❌ 「過去の事故情報は開示できない」 → 透明性がない
- ❌ 「天候が悪くても頑張ります」 → 顧客の圧力に屈する
- ❌ 「パイロット1名で対応します」 → 最低限の体制がない
- ❌ 「安全より納期優先です」 → 根本的に危険
✅ コピーしました!