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多数機の議論から見えた運航の前提条件

2025年12月22日、日本航空株式会社・PwCコンサルティング合同会社による「無人航空機の多数機同時運航を安全に行うためのガイドライン 第一版」ウェビナーを拝見しました。まずはこのような場を設けていただきました関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。

私自身は実務感覚として「操縦者1人で同時に見ていけるのは2〜3機程度が限界に近い」と考えています。とはいえ、今回のウェビナーで一番学びが大きかったのは、「一人で何機まで飛ばせるか」という数字の議論ではありませんでした。

多数機の議論は、運航の弱点を早い段階で表に出します。言い換えると、運航の弱点を見つけるための「負荷テスト」になる。今回の資料は、その見立てを後押ししてくれている内容でした。

「1対5」は現時点の上限として整理されている

ウェビナーでは、対象をレベル3または3.5飛行での「1対5(操縦者1人に対して5機)まで」とし、現時点での上限(人間の目による監視が前提)として整理されていました。
私は「5機」という数字そのものには慎重ですが、重要なのは別の点です。同時に扱う機体数が増えると、操縦者の負荷が確実に増えます。そのときに表に出るのが、「運航の弱点」です。

多数機で露出しやすいのは「判断/共有/記録」

負荷が上がったときに破綻しやすいのは、操縦の上手い・下手ではありません。現場側で特に弱点になるであろう項目は、次の3つと考えています。

1) 判断が遅れる
アラートや異常に気づいても「誰が止めるのか」「止める基準は何か」が曖昧で、対応が後手になる

2) 連絡が途切れる
止める理由や状況が共有されず、別の担当が別の判断をしてしまう(同時運航ほど起きやすい)

3) 記録が残らなくなる
何が起きて、何を根拠に止め、どう再開したかが残らず、次回も同じ場面で迷う

多数機は、この3つが同時多発しやすい。だからこそ、資料でも「操縦者の負荷が増加するため、組織、運航システムが重要」と明確に書かれていました。私はここが、今回一番印象に残ったポイントです。

追加で作成すべきマニュアル「5種類」が具体に挙げられていた

ウェビナーでは「検証したリスクと対応策を考慮して、追加で作成すべきマニュアル類と記載事項」を示すとして、次の5種類を具体に挙げていました。

1) 運航マニュアル
・直接関与者の選定要件
・運航方針
・運航における基準
・事故・重大インシデント等への組織対応手順

2) 通常時対応手順書
・日常点検手順
・事前準備手順
・運航手順

3) 緊急時対応手順書
・想定される運航における異常事態及び緊急事態への対応手順

4) 安全管理規程
・安全方針と安全管理体制
・リスクマネジメント
・安全推進
・事故・重大インシデント等への組織対応方針

5) 教育訓練・資格管理マニュアル
・必要な教育の実施要領
・訓練記録

ここまで具体に書かれていると、解釈の余地はあまりありません。多数機に限らず、「運航を安全に続ける」ための必須セットとして読むのが自然だと感じました。

マニュアル整備はSMSと直結する

上の5種類の中でも、特に「安全管理規程」はSMSにそのまま直結します。安全方針と体制・リスクマネジメント・安全推進・事故・重大インシデントへの組織対応方針、これはまさにSMSが扱う中核です。

言い換えると、マニュアル整備は「書類を増やす」ことではありません。安全を個人任せにしないための共通の取り決めを、組織の言葉として持つ。さらに、更新し続ける。そこまで含めてSMSの土台になります。

当社は、上記5種類のマニュアルをすべて整備済み

当社は、資料で挙げられた5種類のマニュアルを、実は全て整備済みです。今回のウェビナーは、「これらを準備してきたのは正しかった」と改めて確認できる機会になりました。

(当社が整備している文書区分)
・[運航マニュアル相当]:ドローン運航規程、整備・点検規程、バッテリー管理規程、疲労管理規程、ヒューマンファクター規程
・[通常時対応手順書相当]:SOP(標準作業手順書)
・[緊急時対応手順書相当]:ドローン運航業務緊急時対応規程、インシデント報告規程
・[安全管理規程相当]:安全管理規程、リスク管理規程
・[教育訓練・資格管理マニュアル相当]:教育・訓練規程

文書で終わらせず、使える状態まで伴走支援します

必要性は分かっている。でも「自社の運航条件に合わせて書けない」「更新が止まる」ここで止まってしまう会社は少なくないと思っています。

当社の運航コンサルティングでは、次の流れで伴走支援が可能です。

・既存文書の棚卸し(上述の5種類に当てはめ、足りない箇所を特定)
・運航実態に合わせたアップデート(通常時/緊急時の分岐、役割分担、連絡ルート、記録の残し方)
・教育・訓練(机上→現場、訓練記録を残す)
・改訂運用(実績とヒヤリハットを根拠に更新)

多数機の議論は、そのまま運航一般の議論でもありました。操縦技量だけに依存しない。判断・共有・記録を、文書と運用で固めていく。今回のウェビナーを通じて、その重要性を改めて感じました。

<strong>戸出 智祐(代表取締役 / ドローン安全管理コンサルタント)</strong> ノンテクニカルスキル講習<span class="hljs-punctuation">(</span>CRM、チームビルディング、 日本初のドローン応急手当講習<span class="hljs-punctuation">)</span>を提供。米国FAAのSMS義務化に先行したノウハウで、 <span class="hljs-number">1</span><span class="hljs-punctuation">,</span><span class="hljs-number">000</span>時間超の運航経験<span class="hljs-punctuation">(</span>失敗含む<span class="hljs-punctuation">)</span>からSMSを構築。 <span class="hljs-number">2023</span>年より<span class="hljs-number">3</span>年連続で安全報告書を自主公開している、日本唯一の現場安全管理・リスクマネジメント実践者です。 このブログでは、教科書に載っていない 現場の実践知と失敗から学んだ教訓を共有します。 ▶ 講習・コンサルのお問い合わせ <a href="https://daiyaservice.com/contact">https<span class="hljs-punctuation">:</span><span class="hljs-comment">//daiyaservice.com/contact</span></a>

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