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安全報告書公開に対する用意していた「想定問答」を公開します

1月1日に、当社の2025年度安全報告書を一般公開しました。実はこの公開に先立って「きっとこう言われるだろう」という問いと、その問いに対する自分たちなりの答えを、社内で用意していました。

せっかくなので、その想定問答そのものを公開します。安全報告書を読んでくださった方も、まだの方も、当社が何を考えて公開に踏み切ったのかを知っていただく材料になれば幸いです。

なぜ、そこまでして安全報告書を出すのか?

まず最初にお伝えしたいのは、今回の安全報告書の公開は、法律で求められた義務ではないということです。ドローン運航事業者として、あえて自分たちの運航実績やヒヤリハット、未達の取り組みまで含めて開示するのは、正直なところ楽な選択肢ではありません。むしろ、マイナスイメージを与える可能性すらあります。

それでも公開に踏み切っている理由は以下のとおりです。

  • 発注者や地域の方々に対して、何をどこまでやっているのかを記録で示したい
  • ドローン産業界全体として、安全に関する透明性を高めていきたい
  • 自社の安全管理を、外から見られても耐えられる水準に押し上げ続けたい

この3つを両立させる方法として、色々検討したのですが、検討した結果、最終的に安全報告書が一番しっくりきました。

ここから先は、実際に想定していた問いと、それに対する回答をお見せします。

Q1:こんなものがスタンダードになったら面倒くさいから、やめてほしい

A1:正直に言います。作る側も、手間は相当にかかります。ましてや一般公開まで含めると、気が進まない瞬間は何度もあります。それでも出しているのは、書類を増やしたいからではなく、「安全は見える形で説明できてこそ意味がある」と考えているからです。

安全は、やっている本人たちだけが分かっていれば良いものではありません。

  • 発注してくださるお客様
  • 現場周辺の住民の方々
  • ドローン産業界を横で見ている他産業の方々

こうした方たちに対して「何を、どこまで、どうやって安全側に寄せようとしているか」を見える形で出していかないと、社会としての信頼は育たないと思っています。

先に出す側は損もします。粗も見えますし、ツッコミも飛んできます。それでも、誰かが一度は矢面に立たないと、透明性は前に進みません。

もしよければ、目次や項目立ては遠慮なく真似していただいて構いません。自社向けに項目を削ったり足したりしてもらえれば、それだけでドローン産業界全体の安全情報が見えるようになっていきます。「面倒くさいからやめてほしい」ではなく「面倒だけど、うちもやってみるか」そう言ってくれる仲間が一社でも増えたら、本望です。

Q2:文章で書いているだけで、実際には大して出来ていないのでは?

A2:この指摘は、真っ先に自分たちに向けている問いでもあります。文章は、極論すれば誰でも書けてしまうからです。このため、当社の安全報告書は「決意表明集」ではなく「実績と課題の記録」になるように意識しています。

例えば、2025年度版では

  • 実施できた施策と、着手できなかった施策を分けて記載
  • ヒヤリハット件数だけでなく、分析や是正処置の未実施も明記
  • マネジメントレビューや内部監査が予定どおり行えなかった事実も、そのまま記載

といった形で、都合の良いところだけを切り取らないようにしています。

もちろん、外から見えにくい部分があることも自覚しています。そこは今後の運航実績や第三者による評価、何れ予定している外部監査への対応など、時間をかけて証明していくしかありません。

さらに言えば、案件が立て込んでくると、反省や分析よりも、目の前の運航を回すことを優先してしまいがちな時期があります。そのままでは、せっかくの経験が消えていきますし、同じ失敗の芽を見落とすおそれもあります。そして、そうした抜け落ちを防ぐために記録と仕組みが必要です。人は忘れますし、記録がなければ後から原因や傾向を冷静に確認することは難しくなります。

当社では安全報告書を、「言い訳や弁解をする場所」でも「立派に見せるためのPR資料」でもなく、言わば忘れないためのログであり、後から検証できるようにするための台帳と位置付けております。

Q3:あなたたちがすごいのは分かった。結局、自慢したいだけでは?

A3:率直に言うと、この声が一番凹みます。そう見えてしまう部分があるとすれば、それは私たちの発信方法がまだ未熟だという証拠でもあります。

安全の話は、つい成功事例中心になりがちです。結果だけを見ると、自慢話にしか見えない。これはよくある落とし穴だと思います。なので安全報告書では、今後以下3点をより意識していこうと思います。

  • やったことだけでなく、狙いと難しかった点を書く
  • 未達や中止した施策も、理由とあわせて書く
  • まだ答えが出ていない問いを、そのまま「未解決の論点」として残す

それでもなお自慢に見えるのであれば、その時は遠慮なく指摘してください。安全を矜持することをモットーとしている立場である以上、耳の痛いフィードバックから逃げるつもりはありません。

Q4:同業者に対して、何を期待しているのか?

A4:偉そうなことを言える立場ではありませんが、同業者の皆様に期待していることは、「真似していいから、一緒にやりませんか?」です。今回公開した安全報告書は、当社のやり方の一例に過ぎません。項目の分け方も、書き方も、もっと良いやり方はいくらでもあるはずです。それでも

  • 安全に関する情報を年次でまとめる
  • 自社の実績だけでなく、課題も含めて残す
  • 社外に向けて、どこまでをどのように開示するかを決める

という取り組みが、ドローン運航を行う事業者に少しずつ広がっていけば、ドローン産業界全体の透明性と信頼は、確実に厚みを増していくと信じています。

当社の安全報告書は、株式会社ダイヤサービスのウェブサイトからどなたでもご覧いただけます。構成だけでも参考になりそうでしたら、ぜひ遠慮なく持ち帰ってください。

最後に

安全報告書は、当社だけ抜け駆けしたり、マウントを取りにいくためのものではありません。自社の責任を見える形にしつつ、ドローンという便利な道具が長く社会に受け入れられるための土台を、少しずつ築き上げていくための手段だと考えています。

もし、読みにくいとか違和感がある、といったポイントがあれば、ぜひ教えてください。次の版で改善していきます。

繰り返しになりますが、格好よく見せたいからやっているわけではありません。安全に関する説明責任と、社会からの信頼を正面から引き受けるために続けています。この記事をきっかけに、一社でも多くの事業者が「うちも安全報告書、やってみるか」って思ってくださったら、これ以上の喜びはありません。

<strong>戸出 智祐(株式会社ダイヤサービス 代表/“ドローン安全ヘンタイ”)</strong> ドローン運航安全の分野で10年以上の経験を持つ、安全管理・教育の専門家。全国の自治体や企業など10社以上に対して、航空業界レベルの安全運航体制づくりや研修、コンサルティングを行ってきました。 操縦技量だけでなく、チームや組織の“ノンテクニカルスキル”を重視し、現場で本当に役立つ安全文化を普及することに情熱を注いでいます。自ら現場で危険な経験をしたことが原点で、「誰もが安心して働ける現場」を本気で目指して活動中。 千葉市花見川区を拠点に、現場目線でリアルな課題解決にこだわり続けています。無類の車好き。ブログでは、同じ現場型の読者の方と想いを共有できればと考えています。

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