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大型ドローン運航で外せない初動救護。応急手当講習と応急手当キットを標準装備に。

大型機の運航が増えるほど、避けて通れない現実があります。 事故が起きた瞬間、私たちは現場で何ができるのか。結論を先に言います。応急手当は、善意ではありません。運航体制の一部です。

航空法は、救護を義務としています

無人航空機の事故や重大インシデントが起きた場合、飛行を中止し、負傷者を救護し、国へ報告する。 これは国土交通省が制度として明示しています。

さらに重いのは、負傷者の救護など、危険を防止するために必要な措置を講じない場合、航空法に基づく罰則が明記されています点です。

つまり、救護は努力目標ではありません。 運航側の義務として扱われています。

報告要領は、救急車を呼ぶだけで済ませていません

国交省の報告要領では、負傷者がいる場合について、救急車などが到着するまでの間にガーゼや清潔なハンカチ等で止血など、可能な応急救護処置を行うことが具体的に書かれています。

加えて、むやみに動かさないこと。 ただし二次的な事故等のおそれがある場合は、安全な場所へ移動させることまで明記されています。

飛行中だけの話でもありません。 飛行前後の地上作業中の負傷も、重大インシデントの対象に含めるとされています。ここまで書かれているのです。

では、ドローン産業界で、実態としてどれだけの方が、段取りとしてここまで準備できているのでしょうか?以前にとあるセミナーで、180名ほどの前でこの話をした際、ドローンを飛行することがあると手を挙げた方が全体の2/3ほど、その中で応急手当ができると手を挙げた方が10名ほど、止血までできると手を挙げた方は数名のみでした。

数字で現実を見る

例えばDJI FlyCart 100の仕様では、最大離陸重量は日本では149.9kgとされています。ここでは仮に、高度50mで落下した場合の位置エネルギーを概算します。計算は E = 質量 × 重力加速度 × 高さ です。

  • 149.9kg × 9.81 × 50m = 約74J

空気抵抗や姿勢、破断の仕方で数値は前後します。 それでも、軽傷で済む前提に立てるレベルではありません。

同じくらいの衝撃エネルギーの例を以下に並べてみました。

  • 1トンの車が約44km/hで持つ運動エネルギー
  • 2トンの車が約31km/hで持つ運動エネルギー
  • 300kgの重量物が約25mから落下したときのエネルギー

このくらいの現実です。 ただごとではないのは、この比較で理解いただけるかと思います。

現場には空白がある(平均10分という現実)

救急はすぐに到着する。そう信じたい。ですが全国平均で、119番通報から現場到着までの時間は約10分という統計が出ています。10分は短くありません。 山間部、河川敷、夜間、立入管理が難しい場所なら、到着時間はもっと延びる可能性が高いです。

ここで、その空白を埋めるのが現場の初動です。 そして初動が遅れれば遅れるほど、結果は厳しくなります。

できないのは能力不足ではない。練習していないだけ

推測ですが、止血や搬送判断を、チームの段取りとして用意できている現場は多くありません。 それは人の資質ではなく、訓練機会がないからです。当たり前の話ですが、練習していないことは、本番で出ません。これは操縦技量と同じです。

そして大型機ほど、発生頻度ではなく起きた時の影響度が違う。だから、運航体制の一部として準備して応急手当スキルと応急手当キットを準備しておくべきと、私は以前から発信をしております。

応急手当講習で最低限、ここまで到達しておいてほしい

私が求めたい到達点は、知識量ではありません。 初動として、ファーストレスポンダーとして動ける状態です。

  • 通報と連携ができる:119で伝える要点、誘導、社内連絡
  • 出血への一次対応ができる:救急到着までの止血の継続、応急手当キットの使い方
  • 心肺蘇生ができる:俗に言う心臓マッサージのやり方、AEDの使い方
  • 動かすか動かさないかを判断できる:むやみに動かさない。二次的な事故のおそれがある場合は安全な場所へ移動

これらが準備できていない運航は、失礼かもしれませんが、言い方を選ばずに言えば「無防備」同然です。大型機ならなおさらのことです。また、これらを見て見ぬふりのまま機体販売しているところも同じと思っています。

受講を検討している方へ

次に当てはまるのであれば、今のうちに準備しておくことを強く強く推奨します。

  • 大型機や重量物を扱う
  • 人や車両が近い環境で飛ばすことがある
  • 山間部や夜間など、救急の到着に時間差が出やすい場所で運航する
  • 応急手当キットはあるが、誰がどう使うか決まっていない

応急手当講習は、単独でも受講できます。 現場に合わせて、事故時の初動と役割分担、キットの使い方を運航体制に組み込みます。

<strong>戸出 智祐(株式会社ダイヤサービス 代表/“ドローン安全ヘンタイ”)</strong> ドローン運航安全の分野で10年以上の経験を持つ、安全管理・教育の専門家。全国の自治体や企業など10社以上に対して、航空業界レベルの安全運航体制づくりや研修、コンサルティングを行ってきました。 操縦技量だけでなく、チームや組織の“ノンテクニカルスキル”を重視し、現場で本当に役立つ安全文化を普及することに情熱を注いでいます。自ら現場で危険な経験をしたことが原点で、「誰もが安心して働ける現場」を本気で目指して活動中。 千葉市花見川区を拠点に、現場目線でリアルな課題解決にこだわり続けています。無類の車好き。ブログでは、同じ現場型の読者の方と想いを共有できればと考えています。

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