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【連載③】みんな本当は気づいている。ドローン運航と気合い頼みの終わり方

「現場が頑張ればなんとかなる」の限界。
ドローン運航にSMSが必要な理由

この記事は、

「うちの現場はみんな真面目だし、ちゃんとしてる」
「多少のヒヤリはあるけど、まだ大事故は出ていない」

そう思いつつも、どこかで

「このままずっと同じやり方で続けて大丈夫か?」

と引っかかりを感じている人に向けて書いています。

前回までは、ヒヤリの裏側で起きている「人とチームの詰まり」や、自分を知る → 相手を知ることで一言が出やすくなる話を書きました。

今回はそこから一歩進んで、

「それでも、現場の頑張りだけでは守り切れないラインがある」

という話を、SMS(安全マネジメントシステム)という言葉を絡めながら、できるだけ現場目線で書いてみたいと思います。

現場の頑張りがたまたま噛み合っている日と、そうじゃない日

ドローン運航を続けていると、

「今日は現場がうまく回ったな」

という日と、

「一応事故にはならなかったけど、かなり無理していたな…」

という日があると思います。

でも、その違いをちゃんと言葉にできている現場は、正直そこまで多くない気がしています。

  • たまたま疲れていない日だった
  • たまたま経験のあるメンバーが揃っていた
  • たまたま天気や風が味方してくれた

こういう「たまたま」がいくつか重なれば、多少雑な進め方をしても、何も起きないことがあります。その日だけ切り取れば、現場は「うまく回った」ように見えます。

でももし、同じやり方を

  • もっと忙しい日
  • もっと条件の悪い日
  • もっと経験の浅いメンバーで挑む日

にそのまま持ち込んだらどうなるか。そこで初めて、「現場の頑張りだけでは守り切れないライン」が顔を出します。

「ちゃんとやってます」と言いながら、実は運に頼っていないか

何かあったとき、説明責任を問われるのは、いつも現場です。

「なぜ、その判断をしたのか」
「どこまでリスクを見ていたのか」
「やるべきことはやっていたのか」

この問いに対して、

  • 「ちゃんとやっていました」
  • 「気を付けていました」
  • 「みんなで注意しながらやっていました」

……としか答えられないとしたら、それはほとんど 「運に頼っていました」と言っているのとあまり変わりません。

本当は、

  • どの基準でGO/NO-GOを決めていたのか
  • どの手順を踏んでリスクを確認していたのか
  • 何かあったときに、どうやって立て直すつもりだったのか

ここまでが 「決めてある/記録が残っている」 状態で初めて、「やるべきことはやっていました」と胸を張って言えるのだと思います。

現場の頑張りは、“最後の守り”であってほしい

誤解されたくないのですが、私は「現場の頑張り」を否定したいわけではありません。むしろ、最後の瞬間に踏ん張るのは、いつだって人です。

  • 規程がどうであれ、危ないと感じて止めるのは人
  • マニュアルにない状況で最善を選ぶのも人
  • 相手の表情から「今日は無理させないほうがいい」と察するのも人

ただ、その「人の頑張り」が、いつもフルパワーで発揮されているわけではない、ということも、現場にいる人ほど分かっているはずです。

  • 寝不足の日
  • 現場が連続している週
  • プライベートでも悩みを抱えているタイミング

同じ人でも、コンディションによって判断の質は変わります。だから本来、現場の頑張りは

「すべてを支える土台」ではなく、「最後の一線を守るための力」

であってほしい。その手前を支えるために必要なのが、SMSという考え方だと、私は思っています。

SMSを、できるだけシンプルに言い換えると

SMS(Safety Management System)という言葉は、堅くて、どこかお役所っぽくて、「また書類が増えるやつか」と構えてしまうかもしれません。

でも、現場側の感覚で言い換えるなら、

「どう決めるか」「どこまでやるか」「何かあったらどう戻すか」をあらかじめ決めておく“土台”

くらいのものだと捉えています。

もっと砕いて言うと、

  • 「その日飛ばす/飛ばさない」をどう決めるのか
  • 「想定外」が起きたとき、どこまで粘って、どこでやめるのか
  • ヒヤリや不具合があったとき、どうやって記録し、次に活かすのか

この3つを「人の感覚」だけに任せず、チームで共有できる形にしておくこと。それが私の中でのSMSです。

私たちも最初は、「書類を増やしたくない側」だった

偉そうなことを言っていますが、私たちも最初からSMSに前向きだったわけではありません。

  • これ以上書類を増やしてどうする
  • 現場の負担が増えるだけじゃないか
  • そんなことより機体やオペレーションの精度を上げるほうが先じゃないか

正直、最初はこう思っていました。それでも、いくつかのヒヤリやギリギリの現場を経験する中で、徐々に考え方が変わっていきました。

「これは、現場の頑張りの話じゃなくて、そもそも会社として、どこまで責任を持つかの話なんだな」と。

そこから少しずつ、

  • GO/NO-GOの判断基準を文字にする
  • リスク評価の考え方を、紙やフォームに落とす
  • インシデントやヒヤリを記録し、定期的に振り返る場を作る

といったことを、自分たちなりのルールで枠組みの作成を始めていきました。

仕組みができてくると、「現場の空気」が変わり始めた

少しずつですが、仕組みとしてのSMSが整ってくると、現場の空気にも変化が出てきました。

  • 「今日はここが引っかかるので、やめましょう」と言いやすくなった
  • 「この条件ならうちはやらない」というラインを、会社として示せるようになった
  • ヒヤリを報告しても、「文句を言われる日」ではなく、「一緒に考える日」になってきた

特に大きかったのは、

「やる/やらない」「続ける/やめる」の判断を、一人のパイロットや担当者に丸投げしなくてよくなったこと

です。判断の根拠が、

  • そのときの気分
  • 上司の機嫌
  • お客様の圧力

ではなく、

  • 事前に決めた基準
  • 過去の事例やデータ
  • チームで合意したルール

に移っていくことで、現場の心理的な負担は明らかに変わりました。

SMSは、「パイロットの盾」であってほしい

ドローンの現場では、何かあったとき、真っ先に名前が挙がるのはたいていパイロットです。

「なぜあの判断をしたのか」
「止めなかったのか」
「危険だと思わなかったのか」

もちろん、現場の判断が重要であることに変わりはありません。ただ、私はSMSを

「パイロットに責任を押しつけるための仕組み」ではなく、「パイロットを守るための盾」

として整えたいと思っています。

  • 会社としてどこまでリスクを取るのか
  • どんな条件なら引き返すのか
  • 何かあったとき、どう説明し、どう是正するのか

これを、「パイロットが勝手に決めたこと」ではなく、「組織として決めたこと」として持てるかどうか。その違いは、現場の安心感に直結します。

「今もし大きなインシデントが起きたら」と、自分に問うてみる

ここまで読んでいただいたついでに、一つだけ、自分の現場に問いを投げてみてほしいことがあります。

今、もし大きなインシデントが起きたとして・・・
私たちは「ここまでやっていました」と言葉と記録でどこまで示せるだろうか?

  • 口頭の説明だけに頼っていないか
  • 「気を付けています」「注意しています」で止まっていないか
  • 基準やルールが、人ではなく紙やデータの形でも残っているか

この問いに対して、少しでも不安を感じるなら、それはもう立派なスタート地点だと思います。

SMSは、一気に完璧な仕組みを作る話ではありません。

  • 決めていなかったポイントを、一つずつ決める
  • 曖昧だったラインを、少しずつ言葉にする
  • 現場で起きたことを、紙一枚でもいいから残していく

そうやって、「現場の頑張り」だけに乗せていたリスクを、少しずつ「仕組みの土台」に移していくこと。その積み重ねが、私の中でのSMSです。

次回:それでも何かが起きたとき、どう立ち向かうのか

ここまで書いてきた話は、どちらかというと「起こさないための守り」の話でした。でも、どれだけ気をつけても、人が関わる限り、ゼロにはできないものがあります。それが、ケガや体調不良、突然のアクシデントです。

次回は、

  • 「起こさない」だけでは守り切れないライン
  • 応急手当スキルを運航の一部として組み込むということ
  • 現場の空気を変える“対応力”の話

について書いてみたいと思っています。

「起きてしまったときに、どう動くかまで含めて運航だよね」

そう感じている人に、少しでも届けば嬉しいです。

<strong>戸出 智祐(代表取締役 / ドローン安全管理コンサルタント)</strong> ノンテクニカルスキル講習<span class="hljs-punctuation">(</span>CRM、チームビルディング、 日本初のドローン応急手当講習<span class="hljs-punctuation">)</span>を提供。米国FAAのSMS義務化に先行したノウハウで、 <span class="hljs-number">1</span><span class="hljs-punctuation">,</span><span class="hljs-number">000</span>時間超の運航経験<span class="hljs-punctuation">(</span>失敗含む<span class="hljs-punctuation">)</span>からSMSを構築。 <span class="hljs-number">2023</span>年より<span class="hljs-number">3</span>年連続で安全報告書を自主公開している、日本唯一の現場安全管理・リスクマネジメント実践者です。 このブログでは、教科書に載っていない 現場の実践知と失敗から学んだ教訓を共有します。 ▶ 講習・コンサルのお問い合わせ <a href="https://daiyaservice.com/contact">https<span class="hljs-punctuation">:</span><span class="hljs-comment">//daiyaservice.com/contact</span></a>

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