点検・調査・撮影・防災。ドローンの委託業務は着実に増えています。一方で、価格と実績だけで事業者を選び、「安全面は任せきり」になっていないでしょうか。
ドローンは発注者自身が操縦しなくても、万一の際に住民やメディアから問われるのは、まず発注側です。委託であっても、説明責任は発注側に及ぶ、ここが出発点です。
よくある落とし穴
- 仕様書に「安全に配慮すること」という抽象的な一行しかない
- 資格・実績=安全とみなしてしまい運航体制や現場のコミュニケーション(NTS)の確認が抜ける
- ヒヤリハットが起きても、改善につながる情報の出し方が決まっていない
- レベル3.5・4相当の運航でも、応急手当・救護体制を具体的に確認していない
これらは、事業者にとっても発注者にとってもリスクです。では、何から始めればいいのでしょうか?
解決の方向性:発注側の「確認観点」を言語化する
ドローン運航の安全は、人(チームワーク・ノンテクニカルスキル)/手順(計画・標準化)/体制(責任分担・救護・報告)の三位一体で成り立ちます。発注側が見るべきは、機体のスペック競争ではなく、事業者の運航体制が“再現性をもって機能しているか”です。
最初の一歩は、大掛かりな制度変更ではありません。仕様書・公募要領に“たった一行”を加えるだけでも、現場は変わります。
例:仕様書に足す一文(たたき台)
「本業務の実施にあたっては、第三者上空の飛行リスクおよび事故時対応について、事前に運航計画書等で確認できること。」
この一文があるだけで、事業者は計画書に“何を記述すべきか”を理解し、発注者側もどこをチェックすればよいかが明確になります。
無料チェックシートのご案内(自治体・民間発注者向け)
私たちは、発注側の視点で最低限押さえておきたい観点をA4数ページのPDFにまとめました。価格や実績以外に、何を、どこまで、どう確認するかをコンパクトに整理できます。
- なぜ発注側の確認が必要か(思い込みの落とし穴/位置づけ)
- 発注者のためのチェック項目:事業者選定、契約・仕様書、安全要件、住民対応、事故・ヒヤリハット時の役割分担
- 結果の見方と、次の一歩(次回の公募・見積に反映できる改善の例)
それでも迷う方へ。小さく始める
- まずは現行の仕様書に“たった一行”を足す
- 次回の公募・見積依頼時から、運航計画書で事前確認する項目を指定する
- 事業者のヒヤリハット報告の取り扱い・還元方法を合意する(責めるためでなく、改善に活かす枠組み)
これだけでも、発注側の責任と期待値が明確になり、良い事業者ほど応えやすくなります。結果として、住民・関係者への説明も筋が通ります。
よくある質問(簡易版)
Q. 技術仕様書の代わりになりますか?
A. 代替ではありません。発注側の安全確認の観点を補強する位置付けです。既存の技術仕様書と併せてご利用ください。
Q. 事業者の負担が増えませんか?
A. 抽象的な表現を減らし、事前に確認したい具体を明示することで、むしろ事業者は準備しやすくなります。結果として、見積の比較軸もクリアになります。
Q. 内部合意が難しいのですが?
A. まずは“一行”の追記から。そのうえでチェックシートで現状把握→次回公募で改善点を一点だけ反映、という段階的アプローチがおすすめです。
まとめ
ドローン産業界の健全な発展には、発注側の“見える化”が欠かせません。今日できることは、仕様書に一行を足すこと。そして、無料チェックシートで現在地を確認すること。小さな一歩が、次の安全基準になります。

戸出 智祐(株式会社ダイヤサービス 代表/“ドローン安全ヘンタイ”)
ドローン運航安全の分野で10年以上の経験を持つ、安全管理・教育の専門家。全国の自治体や企業など10社以上に対して、航空業界レベルの安全運航体制づくりや研修、コンサルティングを行ってきました。
操縦技量だけでなく、チームや組織の“ノンテクニカルスキル”を重視し、現場で本当に役立つ安全文化を普及することに情熱を注いでいます。自ら現場で危険な経験をしたことが原点で、「誰もが安心して働ける現場」を本気で目指して活動中。
千葉市花見川区を拠点に、現場目線でリアルな課題解決にこだわり続けています。無類の車好き。ブログでは、同じ現場型の読者の方と想いを共有できればと考えています。