「前回も成功したし、今回は人も装備も減らしても大丈夫」
そんな判断をしたことはありませんか?
航空や鉄道、そしてドローン運航の現場でも、こうした思考は重大事故の温床になり得ます。
この現象は「正常化の偏向(Normalization of Deviance)」と呼ばれ、ヒューマンファクター分野では古くから警告されてきました。
正常化の偏向とは?
正常化の偏向とは、本来は許容されないはずの逸脱行動や基準外の運用が、繰り返されるうちに「当たり前」と認識されてしまう現象です。NASAのスペースシャトル事故や航空事故調査でも、その危険性が指摘されてきました。
ドローン運航での典型例
- 前回も問題なかったからと、条件を甘くする
- 人員や装備を減らしても安全だと思い込む
- 「例外運用」が恒常化してしまう
こうした小さな判断の積み重ねが、大きな事故の引き金になります。またドローン運航の現場では、規程やマニュアルに従わない運用が「現場の常識」になってしまうことがあります。この状態は本人やチームに自覚がない場合が多く、外部からの視点や仕組みがなければ是正は困難です。
よくある事故後の言い訳
- 「急に天候が悪くなった」
- 「通信が途切れるとは思わなかった」
- 「人員不足は承知していたが、予算が…」
これらの言葉は、事故当事者が責任回避のために口にすることもありますが、多くの場合は「本当にそう信じていた」ケースが少なくありません。しかし、事前の準備や手順確認を徹底していれば、こうした事態の大半は防げます。
あなたやチームは大丈夫? 正常化の偏向リスク診断
下記のチェックリストで、あなたの運航現場に潜む「慢心」や「安全文化のほころび」を見える化します。安全文化の状態は、単なる経験や感覚では判断できません。
この診断チェックリストは、現場の実態を見える化し、改善の出発点を作ることを目的としています。所要時間は3〜5分。全20問に答えて、現在の安全文化レベルを確認してみましょう。
結果の読み方
- 安全(0–10点):安全文化が機能しており、逸脱の芽は小さい
- 注意(11–20点):慢心や見落としの兆候あり。改善策の導入を推奨
- 要改善(21–30点):是正策の即時実施と継続監視が必要
- 危険水域(31点以上):運航条件の見直しや中止判断を検討するレベル
不明が多い場合は、情報の見える化が不十分な可能性が高く、まず現場の事実把握が必要です。
数値だけで一喜一憂する必要はありません。重要なのは、なぜそのスコアになったのか、何を改善できるのかを考えることです。特に「不明」が多い場合は、情報の共有や手順の明文化といった基礎的な改善から始めるべきです。
安全文化を高めるために、今できること
チェックリストの結果を踏まえ、現場に合わせた改善計画を一緒に作りませんか?
私たちも数多くの現場で、今回の診断結果と同じような課題を目にしてきました。「時間がない」「予算がない」「うちは小規模だから大丈夫」・・・そうした理由で安全対策を先送りにした結果、ヒヤリハットやインシデントが現実化したケースは少なくありません。
しかし逆に、今のうちに課題を見える化し、チーム全員で安全文化を高める取り組みを始めた現場は、事故率が低下し、作業効率や士気も向上しています。
当社では、ノンテクニカルスキルに関する各種講習(チーム・ビルディング講習、CRM基礎編/実践編、SMS講習、ドローン応急手当講習)や、D-LOSA、運航コンサルティングを通じて、貴社の現場に最適化された安全運航体制の構築をサポートします。
ノンテクニカルスキルに関する各種講習
– チーム・ビルディング講習:信頼関係の構築と協働力向上
– CRM講習(基礎編):運航現場での効果的なコミュニケーションと状況認識の基礎
– CRM講習(実践編):実際の運航シナリオを用いた意思決定・相互指摘の訓練
– SMS講習:安全管理システムの導入・運用方法
– ドローン応急手当講習:機体やシステムのトラブル時に現場で取れる初期対応
D-LOSA(Drone Line Operations Safety Audit)
– 実運航中の行動観察で、潜在的リスクや逸脱パターンを抽出
– 改善策を現場レベルでフィードバック
運航コンサルティング
– 規程・手順・教育体制の見直し支援
– 航空会社並みの安全管理体制をドローン運航に適用
安全はコストではなく、未来の投資です。
今日からできる一歩を踏み出し、次の飛行をもっと安心で誇れるものにしていきましょう。
まずはお気軽にご相談ください。

戸出 智祐(株式会社ダイヤサービス 代表/“ドローン安全ヘンタイ”)
ドローン運航安全の分野で10年以上の経験を持つ、安全管理・教育の専門家。全国の自治体や企業など10社以上に対して、航空業界レベルの安全運航体制づくりや研修、コンサルティングを行ってきました。
操縦技量だけでなく、チームや組織の“ノンテクニカルスキル”を重視し、現場で本当に役立つ安全文化を普及することに情熱を注いでいます。自ら現場で危険な経験をしたことが原点で、「誰もが安心して働ける現場」を本気で目指して活動中。
千葉市花見川区を拠点に、現場目線でリアルな課題解決にこだわり続けています。無類の車好き。ブログでは、同じ現場型の読者の方と想いを共有できればと考えています。