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安全運航のための講習は、どの順番で受けるべきか?

ドローン運航の安全性を高めたい。そう考えたとき、多くの企業がまず検討するのが「講習」です。

操縦者の追加訓練を行う。
CRMを学ぶ。
SMSを学ぶ。
応急手当を学ぶ。
チームビルディングに取り組む。

どれも安全運航に関係します。しかし、ここで大切なのは、講習を単なるメニューとして並べて考えないことです。

安全運航のための講習には、それぞれ役割があります。

  • 起きてしまった事態に対応するための講習
  • 現場で異常を見つけ、共有し、判断するための講習
  • 会社として改善を続けるための講習

役割が違う以上、受ける順番にも意味があります。

この記事では、ドローン運航の安全性を高めるために、応急手当、CRM、チームビルディング、SMSといった講習をどの順番で考えるべきかを整理します。

講習は「とりあえず受けるもの」ではない

安全運航のために講習を受けること自体は、とても重要です。ただし、「何となく良さそうだから」「他社も受けているから」「安全対策として説明しやすいから」という理由だけで講習を選ぶと、実運用に活かしにくくなります。

たとえば、現場で異常を見つけても声を出しにくいチームに、知識中心の講習だけを入れても、運航中の行動は変わりにくいかもしれません。

逆に、負傷者が発生したときの初動対応が決まっていない現場に、組織的な安全管理の考え方だけを先に入れても、目の前の不安は残ります。

講習は、知識を増やすためだけのものではありません。現場の行動を変えるためのものです。そのためには、自社の運航体制の中で、どの講習が、どの場面に効くのかを考える必要があります。

講習を選ぶ前に、まず考えるべきことがあります。

その講習は、現場のどの問題を解決するために受けるのか。

ここが曖昧なままでは、講習を受けた事実だけが残り、運航はあまり変わらないということが起こり得ます。

講習群の中で最初に考えるべきは、応急手当

当社では、講習群の中で最初に考えるべきものは、ドローン応急手当講習だと考えています。理由は明確です。応急手当は、事故を起こさないための教育ではありません。起きてしまった事態に対して、被害の拡大を防ぐための教育です。

安全運航というと、どうしても「事故を防ぐ」ことに意識が向きます。もちろん、それは非常に重要です。

しかし、現場では「起きないようにする」だけでは不十分です。万が一、何かが起きたときに、最初の数分をどう動くかも同じくらい重要です。

たとえば、個人情報漏洩が起きた場合を考えてみてください。

  • そのとき最初に必要なのは、再発防止策を会議でまとめることではありません。
  • まず漏れている箇所を止める。
  • 被害拡大を防ぐ。
  • 関係者への初動対応を行う。
  • 原因分析や抜本的な対策は、その後に必要になります。

ドローン運航の現場でも同じです。

  • プロペラによる切創
  • バッテリーに起因する熱傷
  • 夏季屋外運航での熱中症
  • 転倒や打撲
  • 現場関係者や第三者の急病

こうした事態が起きたとき、「まず何をするのか」が分かっていなければ、現場は混乱してしまいます。

  • 誰が119番通報するのか
  • 誰が負傷者の状態を確認するのか
  • 出血がある場合、どのように止血するのか
  • 熱中症が疑われる場合、どのように冷却するのか
  • 救急隊に何を伝えるのか
  • 運航をどう停止し、周囲の安全をどう確保するのか

これらは、起きてから考えるものではありません。事前に学び、現場で動ける状態にしておく必要があります。

安全運航の講習を考えるなら、まずは「起きてしまった事態に対応できるか」を確認する。その意味で、応急手当は講習群の入口に置くべきです。

応急手当は、現場の安心感をつくる

応急手当講習の価値は、単に止血や熱中症対応の方法を学ぶことだけではありません。

現場にいる人たちが、万が一のときに「自分たちは何をすればよいのか」を共有できることに価値があります。

ドローン運航では、PILOTだけが安全を支えているわけではありません。補助者、運航管理担当、現場責任者、関係者、それぞれが現場の安全に関わります。

負傷者が出たとき、PILOTがすべて対応できるとは限りません。運航停止、機体の安全確保、周囲への声かけ、119番通報、応急手当、関係者への連絡。同時に複数のことが発生します。

だからこそ、応急手当は「医療の知識」ではなく、現場対応の共通認識として考えるべきです。

誰か一人が頑張るのではなく、チームとして初動対応に入る。この状態を作っておくことが、現場の安心感につながります。そして、この安心感は、次の段階であるCRMやチームビルディングにもつながっていきます。

次に必要なのは、現場の判断と連携を強化すること

応急手当によって、起きてしまった事態への初動対応力を整えたら、次に考えるべきはCRMやチームビルディングです。CRMは、単にコミュニケーションを良くするための講習ではありません。

状況を正しく見る。
必要な情報を共有する。
違和感を伝える。
相手の立場に関係なく、安全上必要な発言をする。
運航継続か中止かを、チームとして判断する。

こうした力を高めるための考え方です。

ドローン運航では、現場でさまざまな判断が発生します。

風が強くなってきた。
第三者が近づいてきた。
補助者の視界に死角がある。
機体の挙動に違和感がある。
バッテリー残量に余裕が少なくなってきた。
依頼者から「もう少しだけ飛ばせないか」と言われる。

こうした場面で、誰が気づき、誰が伝え、誰が判断するのか。ここが曖昧だと、現場は空気で動くことになってしまいます。

PILOTが飛ばし続けているから、止めにくい。
ベテランが大丈夫と言っているから、反対しにくい。
依頼者が見ているから、中止と言いにくい。
少し違和感はあるけれど、確信がないから黙ってしまう。

こうしたことは、どの現場でも起こり得ます。

安全運航では、異常に気づく力だけでなく、それを伝える力が必要です。さらに、伝えられた情報を受け止め、チームとして判断する力も必要です。ここにCRMの意味があります。

チームビルディングは、CRMを機能させる土台になる

CRMを現場で機能させるには、チーム内の関係性も重要です。もちろん、仲が良ければ安全になるという単純な話ではありません。ただし、普段から役割や考え方の違いを理解していないチームでは、異常時に遠慮や思い込みが出やすくなります。

PILOTは何を見ているのか。
補助者は何を見ているのか。
運航管理担当は何を判断しているのか。
現場責任者はどの情報を必要としているのか。

それぞれの役割が見えていなければ、必要な声かけはできません。

チームビルディングは、単に雰囲気を良くするためのものではありません。現場で互いの役割を理解し、必要な場面で声を出せる関係を作るためのものです。その意味で、チームビルディングはCRMの前段階、またはCRMとセットで考えると効果的です。

応急手当で、起きてしまった事態への初動対応力を整える。そのうえで、チームビルディングとCRMによって、異常を見つけ、共有し、判断する力を高める。この流れが自然です。

SMSは、講習で得たものを会社に残すために必要

応急手当、チームビルディング、CRMを実施すると、現場の対応力は確実に高まります。しかし、それだけではまだ十分ではありません。なぜなら、講習の効果は、放っておくと薄れていくからです。

講習直後は意識が高まります。
用語も覚えています。
確認項目も意識します。
声かけもしやすくなります。

しかし、時間が経つと、元のやり方に戻ってしまうことがあります。だからこそ、SMSの考え方が必要になります。

SMSは、現場の気づきや改善を会社として残し、次の運航に反映していくための仕組みです。

ヒヤリハットを記録する。
デブリーフィングで振り返る。
なぜその場面で判断が遅れたのかを確認する。
チェックリストを見直す。
緊急対応手順を修正する。
教育内容を更新する。
次回のブリーフィングに反映する。

こうした流れがなければ、講習は単発のイベントで終わってしまいます。SMSは、講習を受けた人だけの記憶に頼らず、会社として学習を残すために必要です。

応急手当、CRM、SMSは役割が違う

ここで、講習群の役割を整理しておきます。

応急手当は、起きてしまった事態への初動対応です。負傷や急病が発生したとき、被害拡大を防ぐために必要です。

CRMは、現場の判断と連携です。異常に気づき、共有し、必要な判断を行うために必要です。

チームビルディングは、CRMを機能させる土台です。役割を理解し、必要な場面で声を出せる関係を作るために必要です。

SMSは、改善を継続する仕組みです。講習や現場で得た気づきを、会社として次に活かすために必要です。

それぞれの役割は違います。だから、どれが一番大切かという話ではありません。どの順番で組み込むかが大切です。

講習群の順番としては、次のように考えると整理しやすくなります。

順番講習目的
1ドローン応急手当講習起きてしまった事態への初動対応力を整える
2チームビルディング講習役割理解と声を出せる関係を作る
3CRM講習情報共有・判断・連携を強化する
4SMS講習改善を会社として継続する

この順番は、単なる難易度の順ではありません。

現場で何かが起きたときに動ける状態を作る。
次に、チームとして声を出せる関係を作る。
そのうえで、運航中の判断と連携を高める。
最後に、それらを会社として継続する仕組みにする。

この流れを示したものです。

マニュアル整備と講習は、切り離して考えない

安全運航の講習を考えるとき、もう一つ重要なのがマニュアルとの関係です。講習を受けたとしても、会社としての基準がなければ、現場では個人の判断に戻りやすくなります。

たとえば、CRM講習で「異常時には声を出しましょう」と学んだとしても、会社として中止基準や報告ルートが曖昧であれば、現場は迷いが生じます。

応急手当講習を受けても、緊急時に誰が通報し、誰が記録し、誰が関係者に連絡するのかが決まっていなければ、実際の場面で混乱します。

SMS講習を受けても、ヒヤリハットの記録様式やデブリーフィングの運用がなければ、改善は形に残りません。

つまり、講習とマニュアル整備は別々に考えるものではありません。

講習で人の行動を変える。
マニュアルで会社の基準を明確にする。
現場で使い、振り返り、改善する。

ここまでつながって、初めて安全運航の講習は意味を持ちます。

講習は、受講して終わりではありません。運航体制の中に組み込んで初めて、現場に残せます。

まず全体を評価してから講習を選ぶのが理想

講習の順番を考えるうえで、本来もっとも確実なのは、最初に自社の運航を評価することです。

  • どこに弱点があるのか。
  • 発生後の初動対応が弱いのか。
  • 現場の情報共有が弱いのか。
  • 中止判断が属人的なのか。
  • マニュアルと現場にズレがあるのか。
  • 改善が記録されていないのか。

これを確認したうえで、必要な講習を選ぶ方が、無駄がありません。

株式会社ダイヤサービスでは、D-LOSAによってドローン運航の現状評価を行い、その結果をもとに、応急手当、CRM、SMS、マニュアル整備などの改善策につなげることができます。

ただし、すでに課題が明確な企業は、その課題に対応する講習から始めても構いません。

負傷時対応に不安があるなら、応急手当から。
現場の連携に不安があるなら、チームビルディングやCRMから。
改善が続かないなら、SMSから。

大切なのは、講習を単体で選ばないことです。自社の運航体制の中で、どこに効かせるのかを考えることです。

まとめ:講習にも順番がある

安全運航のための講習は、どれも大切です。

ただし、すべてを同じ位置付けで考えると、優先順位が見えにくくなってしまいます。

講習群の中で、まず考えるべきは応急手当です。理由は、起きてしまった事態への初動対応力がなければ、現場の不安が残るからです。

その次に、チームビルディングやCRMによって、現場の判断と連携を強化します。異常に気づき、共有し、必要な場面で運航を止める力を高めるためです。

そして、SMSによって、講習や現場で得た気づきを会社として残し、継続的な改善につなげます。

講習は、受けた事実を作るためのものではありません。現場の行動を変えるためのものです。

応急手当で、起きてしまった事態に備える。
チームビルディングで、声を出せる関係を作る。
CRMで、判断と連携を強化する。
SMSで、改善を会社に残す。

この順番で考えると、講習は単なる教育メニューではなく、ドローン運航の安全管理体制を支える要素として機能するようになります。

株式会社ダイヤサービスでは、ドローン応急手当講習、チームビルディング講習、CRM講習、SMS講習を通じて、企業のドローン運航安全を段階的に支援しています。

安全運航のために、どの講習から始めるべきか分からない。
自社の運航体制に合わせて、必要な教育を整理したい。
そのような場合は、まず現在の運航課題を確認し、必要な講習を順番に組み込んでいくことをおすすめします。

安全運航は、知識を増やすだけでは続きません。現場で動けるようにし、チームで判断できるようにし、会社として改善を残す。その積み重ねが、継続できる安全運航につながります。

<strong>戸出 智祐(代表取締役 / ドローン安全管理コンサルタント)</strong> ノンテクニカルスキル講習(CRM、チームビルディング、 日本初のドローン応急手当講習)を提供。米国FAAのSMS義務化に先行したノウハウで、 1,000時間超の運航経験(失敗含む)からSMSを構築。 2023年より3年連続で安全報告書を自主公開している、日本唯一の現場安全管理・リスクマネジメント実践者です。 このブログでは、教科書に載っていない 現場の実践知と失敗から学んだ教訓を共有します。 ▶ 講習・コンサルのお問い合わせ <a href="https://daiyaservice.com/contact">https://daiyaservice.com/contact</a>

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