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“日本の航空法が厳しい”は本当?現場の仲間と考える、これからのドローン安全文化

なぜ「航空法が厳しい」と感じるのか

日本のドローン界隈では、「日本は航空法が厳しすぎて自由な運航ができない」「海外はもっと自由で羨ましい」といった声がよく聞かれます。私自身も、申請の手間やルールの細かさに悩まされた経験が何度もありますし、その気持ちはとてもよく分かります。でも一方で、本当の「厳しさ」の本質はどこにあるのか、少しだけ視点を変えて、考えてみませんか?

「航空法の厳しさ」と「現場の安全管理」は同じ?

よく話題になるのは、「日本の法律や申請の細かさ」です。でも、手続きの“厳しさ”と、現場での“本当の安全”は必ずしもイコールではありません。
海外、とくに欧州やアメリカの現場を見てみると、許可を取った後がむしろ“安全管理の本番”。運航ごとにリスク評価をしたり、現場スタッフで振り返りをしたり…こうした日々の積み重ねが、安全文化を支えているケースが多いと言われています。

欧州では「リスクの高い運航」は安全管理も世界標準に

とくに欧州(EASA管轄下)では、リスクの高い運航(Specific Category)において、SORAによるリスク評価の導入が義務化されています。ここで言う「リスクの高い運航」とは、例えば目視外飛行(BVLOS)、都市部や人口集中地、第三者上空での飛行、大型機の運航、夜間・自動化飛行など、「万一の事故時に大きな被害を及ぼす運航」を指します。

“In the ‘specific’ category, UAS operators must conduct a risk assessment based on the SORA methodology or an equivalent method accepted by the competent authority.”
EASA: Specific category of civil drones

さらに、事業者として包括的な認証(LUC:Light UAS Operator Certificate)を取得する場合、SMSの構築・運用が明記されています。

“The UAS operator shall establish, implement and maintain a management system, including a safety management system (SMS), to ensure the safe operation of UAS.”
EU Regulation 2019/947, Article 11, Section 2 (b)

LUC(Light UAS Operator Certificate)は、欧州(EASA/EU域内)でUAS(無人航空機システム)事業者が取得できる包括的な運航者認証制度です。
これは、日本でいう“包括申請”や“業務ごとに許可を取る”のではなく、「一定水準の組織体制・安全管理能力があると国から認められた事業者に、自己承認(Self-authorization)の権限を付与する制度」です。つまり、国際的な基準で“本気の現場力”が問われる仕組みになります。

日本の現場はどこが課題なのか

日本も、「申請書類の厳格さ」や「ルールの順守」には本当に力を入れています。ただ、私自身含めて多くの現場で感じるのは、「現場のリスク評価や日々の安全ミーティングはまだ定着しきれていないかもしれない」ということ。
目視内なら“まあ大丈夫だろう”と流れてしまったり、ヒヤリハットや小さな失敗の共有もまだまだこれからの部分が多いと感じます。もしかすると、このような現場の“甘さ”が、事故やトラブルの根本的な原因となっているのかもしれません。

本当に日本だけ遅れているの?

この話題になると、「いや、海外だって理想通りの現場ばかりじゃないよ」とか、「日本も進化してるはず」という声も多く聞きます。確かにどの国も完璧ではありませんし、日本の現場も日々の努力や工夫がたくさん積み重なっています。実は海外でも、オープンカテゴリー(リスクの低い現場)では自己責任や最低限の教育で済むことも多いですし、文化や事業規模、歴史の違いもあります。「一律に日本だけが遅れている」と決めつけるつもりはありません。

でも、もしかすると、このような現場の“甘さ”が事故やトラブルの根本的な原因となっているのかもしれません。
この点は、現場で日々奮闘されている皆さんと一緒に、これから少しずつでも見直していけたら…と願っています。

それでも、今こそ一緒に“アップデート”していきたい

ただ一方で、欧州やアメリカの先進事業者や行政案件では、「現場で安全文化をどう作るか」「チーム全員でどう守るか」に本気で取り組んでいる現場が着実に増えているのも事実です。
日本の現場でも、申請だけでなく「安全のための対話」や「小さな改善の積み重ね」がもっと当たり前になっていけば、現場力や社会からの信頼は今よりずっと高くなるはず。私はそう信じています。一緒に学び、成長していける仲間が少しでも増えたら嬉しいです。

「押し付け」ではなく、現場の悩みや現実からスタートしたい

安全文化は、誰かに言われて無理やりやらされるものではありません。でも、「これでいいのかな?」という違和感や、事故のニュースを見て不安を感じた瞬間こそ、現場から自分たちで動き出すきっかけだと思います。

文化や規模の違い、リソースの限界もみんなで共有しつつ、「どうせ無理」ではなく、「できるところから、みんなでやってみる」という雰囲気を、今こそ一緒につくっていきませんか?「航空法のせいで・・・」と愚痴る前に、まずは自分たちの現場を直視し、真の安全文化を育てることこそが、日本のドローン産業界の未来を切り拓く道ではないでしょうか。

被害者意識ではなく、“現場の仲間”として

「航空法が厳しいから…」と感じてしまう気持ちも、現場の苦労も、私も痛いほど分かります。でも、本当に日本のドローン業界に必要なのは、「ルールを守る=安全」ではなく、「自分たちでリスクを見抜き、現場から安全文化をつくる」仲間意識と仕組みだと思っています。

海外と比べて「足りない」と思うところがあれば、それをみんなで補い合いながら、現場起点で、少しずつアップデートしていきましょう。現場の小さな一歩が、きっと大きな業界の変化につながります。これからも、お互いをリスペクトし合いながら、安全な運航の未来を目指しましょう。

安全文化を“現場から”本気で変えたい方へ

最後は宣伝になってしまいますが、、、
もし「自分たちの現場でも取り組んでみたい」と思った方がいれば、気軽に声をかけてください。私たちも、みなさんの現場づくりを一緒に応援します。

「ルールを守る」だけで終わらせず、現場で“安全”を実現したい方、「もっと具体的に話を聞きたい」という方はどうぞ気軽にご相談ください。

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