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伝わらない。でも、伝えたい。

「ノンテクニカルスキルの講習なんて、響かないですよね」だいぶ前のことですが、ある方にそう言われたことがあります。正直、心が折れそうになりました。今日はそんな話をちょっとご紹介したいと思います。

なぜ“飛ばす”だけじゃ足りないのか

私たちはずっと、「飛ばす技術」ではなく、「運航を整える力」に注目してきました。
報連相、状況認識、チームでの判断・・・。事故を未然に防ぐ“備え”としてのノンテクニカルスキル(NTS)。
自分たちの運行業務にNTSを積極的に導入して、効果を明確に感じ取ることができたので、これはもっと知って欲しいと思い、講習化しました。「事故の後悔を誰にもしてほしくない」という思いからでした。

どれだけ伝えても、なかなか届かない

でも、現実は甘くありませんでした。

「必要だとは思うんだけど、今は時間がなくて」
「うちは事故とか起きてないので、またの機会に」

そんな声を何度も聞いてきました。資料も動画もも作った。過去には再現ドラマも撮ったことある。できる限り伝わる形にしてきたつもりです。それでもニーズは高まらない。

そして、思いました。「これ、やる意味あるのかな」と。時間もお金も労力もかけて、産業界全体のためにやっているのに、反応がない。だったら別に、自社内だけで完結して門外不出にしても良いのかもしれない。その虚しさは、やった人間にしか分かりません。

「事故が起きない限り、関心は向かない」きっとこれが現実なんだと思います。

それでも続けたのは、“届いた人”がいたから

でもその一方で、講習を受けた一部の方々が、確かな変化を報告してくださいました。

「今まで“報告のための報告”だったのが、“現場を動かす報告”に変わった」
「声をかけるタイミング、周囲の状況を読む意識が持てるようになった」
「新人との情報共有がスムーズになった」

その小さな変化を聞くたびに、「続けよう」と思えたのです。
届いた人がいた。意味を感じてくれた人がいた。それだけで十分じゃないか、と。

全員に届かなくていい。必要な人に届けばいい

全員に届く必要はない。
ノンテクニカルスキルは、「気づいた人」にだけ響けばいい。
むしろ、それでいい。

この講習は、“派手さ”や“カリスマ性”とは無縁かもしれません。
でも、そういう「地味な力」が、現場を支えているんだと、私たちは信じています。

今日もまた、興味を持たれないかもしれません。
でも、いつか必要になったときに、
「あのとき、ちゃんと聞いておけばよかった」と言われないように。

私たちはこれからも、必要な人に、必要な形で、伝えていきます。

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