なぜ私たちは飛ばすだけでなく、人命にも備えるのか。
物流、点検、農業、測量……ドローンが社会インフラの一翼を担う時代が期待される中、忘れてはいけないスキルがあります。
それは「応急手当」。一見すると医療や福祉の領域に思われがちですが、実はドローン産業で働くすべての人にとって無関係ではいられないスキルです。
事故が起きた「その場」で、命が託される
現場で何かが起きたとき、最初に駆けつけるのは、救急車ではなくあなた自身かもしれません。
- 飛行中の機体が落下し、近くの作業員が負傷した
- 操縦訓練中に、参加者が熱中症や転倒で倒れた
- 山間部での点検作業中に、パートナーが急病に
こうした状況で「救急車が来るまで何もできない」では、命を守れません。
応急手当は、技術ではなく“行動力”です。
そしてその行動は、私たちドローン従事者にとって、すでに「善意」ではなく「義務」とされています。
応急処置は航空法上の義務
無人航空機に関する制度では、すでに負傷事故時の応急処置が法的義務とされています。
- 航空法 第132条の85(無人航空機の安全確保)では、操縦者は事故時に人命救助など必要な措置を講じることが明記されています。
- 国土交通省の「事故等報告要領」**では、報告対象となる事故発生時には、 「負傷者に対し、必要に応じて止血等の応急手当を行うこと」と処置の具体例が明文化されています。
つまり、応急手当の知識と実技がなければ、法律で定められた責務を果たせないのです。
山間部や遠隔地では「自分たちでつなぐ時間」が命を左右する
ドローンの多くの運用現場は、人里離れた山間部や郊外です。
- 農薬散布や送電線点検は、病院からの距離が遠い場所で行われるケースが多いです
- 屋外での操縦訓練も、救急車の到着に時間がかかるエリアが多いです
- 通信環境が不安定で、通報すらままならないこともあります
このような現場では、「誰かが駆けつける」のを待つのではなく、「その場にいる人が命を守る」しかありません。
応急手当とは、「備えておく」ことそのものです。
将来的には「人の上空を飛ばす」時代が来る
現在、航空法ではドローンが人の真上を飛行することは原則として禁止されています。
しかし、都市部でのレベル4飛行(有人地帯における目視外自律飛行)が制度化され、徐々に実用化が進むなかで、
「人の上空を飛行すること」が日常となる未来は十分に予想されます。
つまり、万一の落下や接触に備えて、人命を守るスキルも操縦技術と同等に求められる時代が来るはずです。
応急手当はノンテクニカルスキルの一部
ダイヤサービスおよび、当社が運営するドローンスクール「Drone Operation Safety Academy(DOSA)千葉校」では、応急手当のスキルを単なるオプションではなく、「ノンテクニカルスキル(NTS)」の一つと明確に位置づけています。
ノンテクニカルスキルとは
- 状況判断力
- チームでの連携
- 情報共有
- 冷静なコミュニケーション
- そして、その場で命をつなぐ行動力
ドローンの安全運航は、操縦技量だけでは成り立ちません。
人を守る行動力も、プロフェッショナルに欠かせないスキルです。
DOSAの応急手当講習では、現場対応力を重視
DOSA千葉校では、ドローン従事者に求められる視点で設計された応急手当講習を開講しています。
本講習は、単なる知識の習得ではなく、現場で「すぐに動ける力」を重視しています。
- 傷病者の発見から通報、一次対応の流れ
- 意識・呼吸の確認方法
- 胸骨圧迫とAEDの使い方
- 止血や熱中症対応など、現実に起こりうるケースに特化した内容
実務経験のある講師による実技中心のカリキュラムで、現場を想定した実践力を養います。
飛ばす前に、救える準備を
ドローンはただ「飛ばせる」だけでは社会に受け入れられません。
安全運航とは、飛行計画を立てることではなく、「人の命にも責任を持つこと」です。
飛ばす技術 × 守るスキル
この2つを備えたドローン従事者こそ、これからのプロフェッショナルの標準です。
飛ばす前に、救える準備を
それが、私たちダイヤサービス/DOSA千葉校が伝えたい“安全運航”の本質です。