1. 安全管理システム(SMS)導入の背景
当社は、ドローン運航をめぐるリスクを総合的に管理・制御するため、航空業界で確立されたSafety Management System(SMS)をベースに独自の運用ルールを加え、ドローン運航に最適化した安全管理システムを整備しています。
これにより、ヒューマンエラーの防止や機体整備の徹底、教育・訓練の継続などを組織的に推進し、事故・インシデントの未然防止をめざしています。
2. SMSの構造と運用フロー
2-1. SMSの4要素
国際民間航空機関(ICAO)が提唱するSMSは、以下の4つの要素で構成されます。当社はこれらをドローン運航に応用し、社内規程や運用マニュアルに落とし込んでいます。
(1) 安全方針 (Safety Policy)
・経営トップから示される基本方針
・当社では「安全憲章」「行動指針」を策定
・必要なリソース(人員・予算)を確保
(2) 安全リスク管理 (Risk Management)
・リスクアセスメントや疲労管理基準、ステイラルオペレーションルールを導入
・運航前チェックリストや機体整備、現場でのKYT(危険予知)を実施
・ヒヤリハット情報の共有と対策
(3) 安全保証 (Safety Assurance)
・ルールの順守状況をモニタリング
・内部監査や定期点検の仕組み
・インシデント対応や是正措置の管理
(4) 安全促進 (Safety Promotion)
・LOFT訓練、応急手当訓練、クレドカード携行などによる教育・啓発
・安全報告会や勉強会を通じて、全員でノウハウを共有
2-2. 当社の運用フロー(PDCAサイクル)
当社では、上記4要素をPDCAサイクルで回しながら、次のようなフローを通じて安全性を高めています。
(1) Plan(計画)
・安全方針と年度ごとの目標を設定
・運航ルール(疲労管理基準など)の策定・見直し
・教育・訓練プログラムの計画
(2) Do(実行)
・実際の運航業務(リスクアセスメント、整備点検、ヒヤリハット報告)
・ノンテクニカルスキル研修(LOFT訓練、応急手当講習など)
・ステイラルオペレーションルールの順守
(3) Check(評価)
・内部監査や定期レビューで、運航ルール順守状況やインシデント対策を点検
・フライトログ・整備記録(FS-DOD)を分析し、問題点や改善点を洗い出す
・安全報告会などでスタッフ間の情報共有
(4) Act(改善)
抽出された課題を翌期の運航計画やルールへ反映
教育内容やクレドカードに即時修正を加え、組織全体で再発防止を推進
社内システム(FS-DOD)やマニュアルの更新
3. 安全管理の主な取り組み
3-1. リスクマネジメント
(1) 疲労管理基準
・飛行勤務時間、連続飛行時間の上限を設定し、休憩や休養時間を義務化
・不可抗力で超過する場合も、必ず上長承認を取る
(2) ステイラルオペレーションルール
・離着陸や高度30m未満、緊急時などに不要な会話を禁止
・チームが運航業務に集中し、ヒューマンエラーを減少
(3) 整備と点検
・毎月1回の定期整備を2名体制で実施
・修理・交換履歴をクラウド管理し、全スタッフが閲覧可能
3-2. 安全保証(モニタリング & 内部監査)
(1) ヒヤリハット共有
・自主的に報告しやすい風土づくり(小さなトラブルでも即記録)
・定期的な安全報告会で原因分析・対策案を共有
(2) 定期監査
・安全推進グループがルール順守状況を監査し、改善提案をまとめる
・必要に応じて社外専門家や自治体と連携
3-3. 安全促進(教育・意識啓発)
(1) LOFT訓練
想定シナリオを準備し、操縦者と運航管理者のチーム連携を強化
(2) 応急手当講習
・全運航スタッフが上級救命技能を習得
・現場へのFirst Aidキット携行
(3) クレドカード携行
安全憲章・行動指針をカード化し、迷ったときにすぐ確認
4. 社内体制と責任区分
4-1. 組織図(抜粋)
社長
└─ 安全統括管理者
└─ 安全推進グループ
├─ 運航管理(OCC)
├─ 整備担当(FM)
└─ 教育・研修担当
社長
最終的な安全責任を負い、必要リソースを配分
安全統括管理者
事業全体の安全方針・計画を統括し、経営層へ報告
安全推進グループ
日常の監査、ヒヤリハットの収集、教育プログラムの立案などを行う
4-2. 内部コミュニケーション
- 運航前ブリーフィング
操縦者、運航管理、整備担当が直前で最終確認 - 運航後のログ共有
フライトログやヒヤリハットをFS-DODに記録し、全員が即時アクセス - 定例会議
月1回の安全会議でインシデント事例を検討し、次の施策に反映