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Jxiv 掲載論文
自主論文 / Independent Research Paper

無人航空機運航における
現場安全設計

― 制度遵守と運航実装の接続 ―

Field Safety Design in Unmanned Aircraft Operations:
Connecting Regulatory Compliance and Operational Implementation

戸出 智祐
株式会社ダイヤサービス 代表取締役 / D-LOSA 開発者
Published
April 2026
DOI
Under Review
License
CC BY-NC-ND 4.0

Jxiv(JSTプレプリントサーバ)にて公開予定 ・ 現在審査中

Abstract

要旨


日本では、無人航空機の社会実装に向けて、飛行形態に応じた制度整備が進められてきた。機体認証、無人航空機操縦者技能証明、飛行許可・承認、飛行計画通報、飛行日誌、事故・重大インシデント報告等の枠組みは、無人航空機を社会の中で運航するための重要な基盤を形成している。

しかし、制度遵守そのものが、個別現場における安全運航を保証するわけではない。実際の運航現場では、気象、地形、第三者の接近、電波環境、関係者調整、発注者要望、人的要因などが複合的に作用する。資格保有や許可承認の取得のみでは、現場で生じる判断の迷い、役割の曖昧さ、継続・中止判断のばらつき、記録・改善の不足といった課題に十分対応することはできない。

本稿では、日本の無人航空機運航における制度遵守と現場安全設計の差異を整理したうえで、現場安全設計を阻害する要因として、個人責任に偏った原因分析、不具合・ヒヤリハットの表出を抑制する組織文化、操縦資格と安全運航能力の混同、安全管理コストの不可視化、行政依存型の安全観の五点を取り上げる。さらに、航空分野で発展してきた CRM、SMS、TEM 等の概念を参照しつつ、無人航空機運航に必要となる現場安全設計の構成要素を提示する。

具体的には、運航前設計、役割と連携、継続・中止判断、記録と改善の四領域からなる安全管理プロセスを提案するとともに、その実装例として著者が開発した D-LOSA (Drone-Line Operations Safety Assessment) フレームワーク(7フェーズ・103項目、SORA 2.5 対応)との対応関係を示す。

Key Findings

論文の要点


01

制度遵守と現場安全設計は別物である

資格を保有し、許可承認を取得し、保険に加入していることは事業者の必要条件である。しかしそれは、現場で誰が何を監視し、誰が中止判断を下すかを自動的に決めるものではない。現場安全設計は、制度遵守の上に積み上げられるべき、独立した実務領域である。

02

現場安全設計は四領域で構成される

本論文では、運航前設計、役割と連携、継続・中止判断、記録と改善の四領域からなる安全管理プロセスを提案した。これは概念整理にとどまらず、観察・スコアリング・改善のサイクルとして実装可能な構造である。

03

四領域は実装可能なフレームワークである

提示した四領域は概念整理にとどまらず、観察・記録・スコアリング・改善のサイクルとして実装可能な構造である。本論文ではその実装例として、著者が開発したD-LOSAフレームワーク(7フェーズ・103項目、SORA 2.5対応)との対応関係を示している。

Implementation Example

本論文と D-LOSA の関係


本論文の第6章で提示した「現場安全設計の四領域」は、概念的な整理にとどまるものではなく、評価可能・改善可能な実装に落とし込むことができる。その一例として、著者が開発した D-LOSA (Drone-Line Operations Safety Assessment) フレームワークの構造を以下に示す。

D-LOSAは、ICAOが文書化した有人航空機向けLOSA (Line Operations Safety Audit) の構造を、ドローン運航に適合する形で再構成したものである。脅威・エラーリストの構築においては、文献記載の有人航空機向け脅威カテゴリ(ATC指示、地形、気象、他機等)を出発点とせず、実運航で観察された脅威項目(電波環境、GNSS干渉、第三者動線、バッテリー、風速変化等)を抽出することで、ドローン現場の実態に即した評価項目を構成した。

7
運航フェーズ
103
評価項目
SORA 2.5
国際標準対応

各項目は5段階スコアリングにより定量化され、評価結果は6つのドメインに集約のうえレーダーチャートとして可視化される。これにより、運航品質のばらつきや改善対象が一覧化される。また、評価項目はJARUSが策定し国内外の運航リスク評価で参照されるSORA 2.5の枠組み(iGRC、GRC、ARC、SAILおよびOSO等)との対応関係を有しており、国際的なリスク評価との整合性を確保している。

D-LOSAは、本論文で提示した四領域を組織的に運用するための一例である。同種のフレームワークは他にも構築可能であり、各事業者が自社の運航形態に応じて構成し得る。重要なのは、四領域を概念にとどめず、観察・記録・スコアリング・改善のサイクルとして実装することである。

D-LOSAは、当社のドローン運航サービスにおける標準的な評価手法として用いられている。フレームワークの実装の詳細については D-LOSAサービス紹介ページ を参照されたい。
How to Cite

引用方法


Japanese

戸出智祐. 無人航空機運航における現場安全設計:制度遵守と運航実装の接続. Jxiv (Under Review). 2026.

English

Toide N. Field Safety Design in Unmanned Aircraft Operations: Connecting Regulatory Compliance and Operational Implementation. Jxiv (Under Review). 2026.

Author

著者プロフィール


戸出
戸出 智祐
Noriyuki Toide
株式会社ダイヤサービス 代表取締役
DOSA 千葉校 管理者兼講師 / D-LOSA 開発者

1974 年創業の家業を継承し、自動車整備業から 2015 年にドローン運航・教育分野へ事業転換。2016 年、千葉県内で初めて自治体と災害時ドローン協定を締結。2019 年、操縦者教育に CRM・SMS の航空概念を導入した DOSA を設立。2023 年、千葉市ラストワンマイル配送実証事業のリードオペレーターを担当。安全運航を事業活動の中核に据え、現場運航と安全管理体系の双方を実践する。

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