最近、少し気になることがあります。ドローン産業界では、「飛ばせるだけでは食べていけない」という話を聞く機会が増えました。実際、その通りだと思います。
- 撮影
- 測量
- 点検
- 農業
- 物流・運搬
- 災害対応
それぞれの分野で専門性を身につけなければ、事業として差別化することは難しくなっています。だから多くの事業者が、新しい枝葉を伸ばそうとします。それ自体は間違っていません。むしろ自然な流れです。
ただ、その様子を見ていると、どうしても気になることがあります。
それが、「根」です。
枝葉は増えている。でも根はどうだろう。そんなことを考える機会が増えました。
私は10年以上、ドローンの運航現場に関わってきました。その中で感じるのは、事故やトラブルの原因は、意外と操縦そのものではないということです。
飛行前の準備だったり、関係者との調整だったり、中止判断だったり、役割分担だったり。あるいは、そもそもその運航計画に無理があったり。つまり、「飛ばすこと」の前に問題があるケースが少なくありません。ところが、そうした話はあまり注目されません。
- 新しい機体の話
- 新しいサービスの話
- 新しいビジネスの話
そういった枝葉の話題の方が分かりやすいからです。でも、本当に木を支えているのは枝葉ではありません。根です。
撮影ができることと、安全に運航できることは同じではない
撮影ができることと、安全に運航できることは同じではありません。測量ができることと、組織として運航できることも同じではありません。もちろん、撮影や測量、点検といった専門性はとても大切です。枝葉がなければ、木は大きく育ちません。ただ、その枝葉を支えているものがあります。
- 基本的な操縦技量
- 法令知識
- 機体知識
- 国家資格
これらは幹のようなものです。すべての土台となる大切な要素であり、これがあるから枝葉が育ちます。しかし、幹だけでもまだ足りません。その下にある、普段は見えない部分があります。
- 運航設計
- リスクアセスメント
- CRM
- SMS
- 応急手当
- 安全文化
- 継続的改善
これらが根です。
根は普段、外から見えません。SNSにも映りません。お客様にも伝わりにくいかもしれません。でも、木を支えているのは根です。
最も怖いのは、根腐れに気付かないこと
私は、根が浅い組織よりも、根腐れしている組織の方が怖いと思っています。根が浅い組織は、自分たちに足りないものを理解しています。もっと学ばなければならない。もっと改善しなければならない。そう考えることができます。
でも、根腐れは違います。飛行実績もある。売上もある。お客様もいる。専門業務も行っている。だから問題ないと思ってしまう。
しかし実際には、ヒヤリ・ハットが共有されていない。中止基準が曖昧。判断が特定の人に依存している。当日の対応力に頼っている。応急時の対応を想定していない。
それでも日々の業務は進んでいきます。だから気付きません。
木も同じです。葉が茂っていると、元気そうに見えます。枝が伸びていると、成長しているように見えます。でも、根の状態は外からは見えません。
そして根腐れが進んでしまうと、気付いた時には大規模な治療が必要になります。場合によっては、枝を大きく落とすこともあるでしょう。最悪の場合、樹木で言えば抜根や伐採に近い対応が必要になることもあります。
ドローン事業でも同じだと思います。
本当は少し立ち止まって見直せば済んだはずなのに、問題を先送りし続けた結果、事業の一部を止める、体制を大きく作り直す、場合によっては撤退を判断せざるを得ない。そうなってからでは、かなり苦しい。だからこそ、倒れてから気付くのではなく、倒れる前に根の状態を見てほしいのです。
私たちは「太陽」にはなれない。でも「肥料」と「水」は提供できる
当社およびDOSA千葉校ができることは、皆様のドローン事業の「根」をしっかりとしたものにすることです。
私たちは、測量会社やインフラ事業者といった既存事業者ではありません。ですので、測量や点検といった枝葉を直接伸ばす「太陽」のような存在にはなれません。そこは、それぞれの専門事業者の皆様が持っている強みです。
その代わり、私たちは樹木の状態を一緒に診断し、根を強固なものにするための肥料と水を提供することはできます。
樹木診断にあたるのは、現状把握や課題抽出です。肥料にあたるのは、運航設計、CRM、SMS、リスクアセスメント、応急手当、安全文化といった知識や仕組みです。水にあたるのは、教育・研修、振り返り、継続的改善です。
一度学んで終わりではありません。根は、継続して育てていくものです。

応急手当も、根の一部です
ドローン運航において、応急手当は軽視されたままです。しかし、私はこれは根の一部だと考えています。現場で起こるのは、ドローンの事故だけではありません。
- 熱中症
- 転倒
- 切創
- 蜂刺され
- 急病
実際の現場では、人に関するトラブルの方が先に起こることもあります。
どれだけ安全に配慮しても、リスクをゼロにすることはできません。だからこそ、事故やトラブルを防ぐだけでなく、万が一発生した時にどう対応するかまで考えておく必要があります。
応急手当は、単なる知識ではありません。現場を最後まで見捨てないための備えです。そしてそれは、組織としての運航に必要な根の一部だと思っています。
運航は、操縦者一人の能力だけでは成立しない
先日公開した自主論文でも、運航設計と安全文化について整理しました。論文という形ではありますが、伝えたかったことは難しい話ではありません。
ドローン運航は、操縦者一人の能力だけで成立するものではない。組織として設計するものだ。
その一点です。
- 誰が判断するのか?
- 誰が確認するのか?
- どのような基準で中止するのか?
- ヒヤリ・ハットをどう共有するのか?
- トラブル発生時に誰が何をするのか?
- そして、次の運航にどう活かすのか?
こうしたことを曖昧にしたまま枝葉だけを伸ばしていくと、見た目は成長しているように見えても、どこかで無理が出ます。
逆に、根が強い組織はしぶといです。派手さはないかもしれません。でも、事故やトラブルを未然に防ぐ力がある。顧客や社会からの信頼を積み上げる力がある。無駄を減らし、効率的な運航につなげる力がある。環境変化にも耐え、長く成長していく力がある。
それが、根の強い組織の未来だと思います。
まずは、根の状態を見直してみませんか
枝葉を伸ばすことは大切です。専門性を高めることも大切です。新しいサービスを広げることも大切です。
ただ、その前に、あるいは同時に、根の状態を見直してみませんか。今の運航は、誰か一人の経験に頼りすぎていないでしょうか?中止基準は明確でしょうか?ヒヤリ・ハットは共有されているでしょうか??応急時対応は想定されているでしょうか?安全管理体制は、実際の現場で機能しているでしょうか?
強風の日に木を支えるのは、枝葉ではありません。根です。
そして根腐れに最も気付きにくいのは、その木を育てている本人たちなのかもしれません。
株式会社ダイヤサービスでは、運航設計、安全管理体制構築、リスクアセスメント支援、各種ノンテクニカルスキル講習を通じて、事業者の根づくりを支援しています。
DOSA千葉校でも、国家資格取得だけでなく、その先の安全な運航を見据えた学びを提供しています。
撮影ができることと、安全に運航できることは同じではありません。測量ができることと、組織として運航できることも同じではありません。だからこそ、まずは一度、根の状態を見直してみてください。
それは遠回りではなく、長く成長するための近道だと思います。

戸出 智祐(代表取締役 / ドローン安全管理コンサルタント)
ノンテクニカルスキル講習(CRM、チームビルディング、 日本初のドローン応急手当講習)を提供。米国FAAのSMS義務化に先行したノウハウで、 1,000時間超の運航経験(失敗含む)からSMSを構築。 2023年より3年連続で安全報告書を自主公開している、日本唯一の現場安全管理・リスクマネジメント実践者です。 このブログでは、教科書に載っていない 現場の実践知と失敗から学んだ教訓を共有します。
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