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「飛ばせる時代」の到来と、問われる“違い”の本質

DJI Mini 4 Proが、国土交通省の第二種型式認証を取得しました。
これは、日本のドローン制度における非常に大きな転換点であり、今後の運用に大きな影響を与える出来事です。

型式認証とは、機体そのものが国の定める安全基準を満たしていることを国が正式に認める制度です。
この認証を受けた機体を使用することで、特定飛行(DID上空・夜間・目視外など)に関して、個別の許可・承認申請が一部不要になります。

つまり、「飛ばす」ことのハードルは今後、着実に下がっていくといえるでしょう。

制度は誰のためにあるのか?

実はこの「型式認証制度」、もともとは安全性向上の他に、中国製ドローンへの過度な依存を見直すことを目的として導入されたという見方もあります(実際のところは分かりません)。

ところが、今回認証を取得したのは、他でもないDJI社のMini 4 Proでした。
型式認証制度が発足して以降、複数の国産機体が認証を取得してきましたが、DJIが認証を取得するのはこれが初めてです。
そしてこれは、今後の展開を大きく左右する出来事といえます。制度上は厳しい基準が設定されたはずが、最終的には「完成度の高さ」ゆえに、DJIを認めざるを得なかったというのが実情だと思います。

そして、これは始まりにすぎません。今後は、エンタープライズモデルを中心に、DJI製品の認証取得が進んでいくことが確実視されています。つまり、仮に制度が中国製排除を目的としていたとしても、現場では「使える機体」が選ばれる現実は変わらないのです。

「どこで頼んでも同じ」に見えてしまう時代へ

こうした流れが進めば進むほど、業務で使われる機体は一層DJIに集中していきます。
そして誰もが同じ機体を使い、同じようなフライトができるようになったとしたら、発注側から見れば「どこに頼んでも同じ」に映ってしまう可能性があります。

差別化が難しくなれば、当然ながら価格競争が激化します。その結果、サービス提供者は適正な利益を確保しにくくなり、消耗戦に巻き込まれるおそれすらあります。
何なら、自社で運用する既存事業者も増えていくと思います。

サービスの価値は「人」に宿る

このような時代において、真に差別化できる要素は何か。
それは、機体やスペックではなく、「誰が、どう飛ばすか」という運用者のスキルと姿勢にあります。

・なぜこのルートを選んだのか
・なぜこの判断をしたのか
・なぜこの説明を加えたのか
・万が一にどう対処するのか

そうした判断の質や行動の背景にあるのは、技術だけではありません。
現場力、チームとの連携、安全意識、顧客対応力、リスクヘッジといった、ノンテクニカルスキル(NTS)こそが、サービスとしての価値を決定づけていきます。

飛ばせるだけでは、もう足りない

型式認証によって飛行がしやすくなることは、現場にとって確かに歓迎すべき変化です。
しかし、飛ばせる人・会社が増えたその先で、何が違いとなるのかを見失ってはなりません。

“飛ばせること”そのものが、もはや希少性ではなくなりつつあります。
これからは、「どう飛ばすか」「誰が飛ばすか」が問われる時代です。

そしてそれは、制度でも、機体でも、代替できない領域です。

最後に

私たちは、ドローン産業界の未来を見据えて、ノンテクニカルスキルを軸とした教育と運用のあり方を、これからも模索し続けていきます。飛行技術や機体性能に依存しない、「人の力」こそが、安全と信頼の土台になると信じているからです。

ただし、こうした考え方がすべての人に響くとは思っていません。誰にでも伝えようとは思っていませんし、誰にでも響かせようとも思っていません。“飛ばすだけでは足りない”と本気で思う人にこそ、私たちは応えていきます。

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